今日のデータ主導の世界において、中堅企業は、情報に基づいた意思決定の実行やイノベーションの推進、競争力獲得のために、ますますデータへ依存するようになってきていますが、、データ量が増えて複雑になるにつれ、この貴重な資産の管理や理解が大きな課題となっています。そこで、データカタログツールの出番です。中堅企業のデータアナリストであれば、このデータ革命の最前線にいるわけですから、データカタログツールを理解するのは成功のために非常に重要です。そこで本記事では、データカタログ作成ツールの総合ガイドとして、その利点、主な機能、選択基準、そしてデータ アナリストにどのようなメリットをもたらすかについて見ていきます。
中規模企業のデータの課題
中規模企業では、データの使用時に以下のような特有のデータ課題に直面することがよくあります:
- データのサイロ化:データは CRM、ERP、MA(マーケティングオートメーション)などの様々なシステムに存在するため、データウェアハウスやデータレイクで統一されたビューを得にくい。
- データの乱立:データの量と種類は増加の一途をたどっており、すべてを把握するのは大変。
- メタデータの欠如:適切なメタデータがなければ、データのコンテクストや意味はわかりにくい。
- データ品質の問題:一貫性のないデータ形式やエラーは、データ利用者による不正確な分析や欠陥のある意思決定につながることがある。
- データガバナンスへの懸念:GDPR や CCPA などのデータプライバシー規制へのコンプライアンスを確実に効率化するのは、機密データを保護する上でますます複雑になっている。
このような課題で、データアナリストはデータの特定や理解、効果的な活用ができにくくなり、それが時間の浪費や労力の重複、機会の逸失につながります。
データカタログツールとは
データカタログツールは、組織がデータ資産の管理や理解をするためのデータプラットフォームであり、データのコンテクストや意味、品質を記述する豊富なメタデータとともに、利用可能な全データの一元的なインベントリとして機能します。これは、全データの総合的なカードカタログだと考えてください。
データカタログツールの主な利点
では、データカタログ ツールはどのように機能し、データチームはどのように活用するのでしょうか?
- データ発見の改善:データカタログで、リアルタイムのデータアナリストは必要なときに必要なデータを見つけやすくなる。複数のシステムを検索するのではなく、カタログの検索機能とフィルタリング機能を使って、関連するデータセットをサッと見つけることができる。
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データ理解の強化:データカタログで、データの出所、定義、系統、品質など、データを説明する豊富なメタデータを得られる。これにより、データアナリストはデータのコンテクストと意味を理解しやすくなることから、より正確な分析につながる。
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データコラボレーションの増加:データカタログで、データアナリストやデータサイエンティスト、その他のデータ関係者間の連携がしやすくなる。データカタログで、データ環境に関する共通の理解を得られることから、チームはより効果的に連携できるようになる。
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データガバナンスの効率化:データカタログは、データ資産とそれに関連するメタデータを一元的に表示することで、データガバナンスの取り組みに対応する。これにより、企業はデータプライバシー規制へのコンプライアンスの確保や、データアクセスの効率的な管理ができる。
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データ品質の向上:データカタログは、データ品質ツールと統合して、データ品質の監視や改善をすることができる。データ品質の問題を特定してその対処をすることで、組織はデータの正確性と信頼性を確保できる。
- 効率性の向上:データカタログでデータの発見と理解がシンプルになることで、データアナリストはより多くの時間をデータ分析やインサイトの生成などの、より戦略的なタスクに集中できる。
データカタログツールの主な機能
- 自動メタデータディスカバリ:データソースを自動スキャンし、メタデータを抽出する機能。
- データリネージの追跡:様々なシステムを通過するデータの起源と変換を可視化する。
- データのプロファイリング:データの種類、分布、質などの特徴を理解するのにデータを分析する。
- 検索と発見:これでユーザーは、関連するデータ資産の検索や発見をしやすくなる。
- データガバナンス機能:データガバナンスポリシー、アクセスコントロール、コンプライアンス要件に対応。
- 連携と共有:共有ワークスペースと注釈により、データのステークホルダー間の連携を促進する。
- 他のツールとの統合:データ統合、データ品質、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールとの連携。
オススメのデータカタログツール
検討すべきデータカタログソフトウェアツールを以下に挙げてみましょう:
Alation データカタログ
Alation の主力データカタログソフトウェアは、2012年に設立され、AI、機械学習、自動化、NLP(自然言語処理)を活用し、データ発見のシンプル化、ビジネス用語集の作成、行動分析エンジン13を搭載しています。このエンジンは、さまざまなデータソースをインデックス化し、パターン認識を使って人気ランキングや利用推奨度を生成します。また、Alation には、データインテリジェンスプラットフォームの一部として、データガバナンスとデータリネージアプリケーションも備わっています。主な機能には、データの健全性に関わる問題にフラグを立てて企業のデータガバナンスポリシーを定める機能、さまざまなデータソースへの事前構築済みコネクタ、ビルトインの SQL エディタなどがあります。
Alex 拡張データカタログ
Alex Solutions は2016年に設立され、AI と機械学習技術を活用したデータカタログソフトウェアを設計しました。このツールはさまざまな種類の構造化データ、半構造化データ、非構造化データに対応していることから、データ資産を検出して統合カタログに取り込むプロセスを自動化することができます。また、Alex はデータガバナンスとデータ品質のさまざまな側面も自動化することから、データガバナンス管理者は中央コンソールからのポリシー作成や、データスチュワードの割り当て、データパイプラインプロセスの追跡ができるようになります。
Ataccama データカタログ
Ataccama は、2008年に設立され、AI の使用により自動化されたデータ ガバナンスと管理機能に対応する統合プラットフォームである Ataccama One のコアコンポーネントとしてデータカタログツールを提供しています。このデータカタログは、データベース、データレイク、ファイルシステム、その他のソースからデータをカタログ化することができ、データ発見と変更検出を自動化する機能を備えています。また、継続的なデータ品質モニタリングとデータクレンジング、ビルトインデータプロファイリング、データ分類、データリネージ、データ観測性、リレーションシップディスカバリー、メタデータ管理機能にも対応しています。
Atlan データ検出とカタログ
Atlan Data Discovery & Catalog は2018年に発売され、データエンジニア向けの SQL 構文検索機能を備え、データ資産と関連するビジネスメトリクスに基づく自然言語検索に対応しています。このツールは、共同データワークフローをカタログに統合することができ、Companion Sidebar 機能により、データ資産、その使用状況、Jira の問題に関する情報を一目で確認できます。また、メタデータの完全カスタマイズ可能な取り込みができるようになるオープン API と、データ系統の要約、SQL クエリ、ビジネス用語の説明を生成できるコパイロットツールである Atlan AI も備わっています。
AWS Glue Data Catalog
AWS Glue Data Catalog は、完全に管理された ETL(抽出、変換、格納)サービスである AWS Glue の永続的なメタデータストアです。これでデータ管理チームは、AWS クラウドプラットフォーム上でデータウェアハウスやデータレイクを作成する際に、ETL 統合ジョブで使うメタデータの保存や注釈付け、共有ができます。カタログツールで、スキーマとデータアクセスコントロールの変更を追跡することでデータガバナンス要件を強化することができ、さまざまな AWS サービスにまたがるデータプロセスに対応できるようになります。
BigID データカタログ
BigID は2016年に設立され、データセキュリティ、データプライバシー、データガバナンスのイニシアチブに対応するデータインテリジェンスプラットフォームの一部として、このツールを開発しました。このカタログソフトウェアは、機械学習アルゴリズムを使ってデータ資産を検索し、技術、ビジネス、運用のメタデータを採取します。また、AI と機械学習により、データの分類、データのプロファイリング、メタデータのタグ付けを自動化したり、ガバナンスされていないデータ資産や保護されていないデータ資産を特定する機能も備わっています。
Collibra データカタログ
Collibra は2008年にスタートし、データカタログを中心としたデータインテリジェンスプラットフォームが備わっています。このカタログツールは、機械学習とAIを活用した自動化機能のセットに対応しており、データの発見、分類、キュレーションを行います。また、生成的AI(GenAI)を使って、データ資産の説明を作成する機能も備えています。そしてさまざまなデータストア、ビジネスアプリケーション、BIプラットフォーム、データサイエンスツールからメタデータを取り込むための統合機能が100以上事前構築されており、データカタログを管理するための設定可能なワークフローが備わっています。。
Data.world
Data.world は、SaaS プラットフォームとして提供されるクラウドネイティブなデータカタログツールです。同社は2015年に設立され、さまざまなシステムにわたるエンタープライズ データ資産とそれに関連するメタデータを意味的に整理したビューを提供するナレッジグラフアーキテクチャ上に、このカタログソフトウェアを構築しました。また、Data.world プラットフォームには、データカタログのデプロイと管理、データガバナンスタスクの自動化を支援し、チャットのようなインターフェースを通じてカタログユーザーのデータ発見を改善するボットのセットが含まれています。
Quest の Erwin データ カタログ
最初の Erwin ソフトウェアは、データ監視用に1983年に作られましたが、この製品ラインは長年にわたっていくつかの買収を経て、現在は Quest Software の所有となっています。このデータカタログツールは、データガバナンスのさまざまな側面に対応するために2017年に立ち上げられた、より広範な Erwin Data Intelligence プラットフォームの一部として開発されました。このソフトウェアは、メタデータの自動収集、カタログ化、キュレートを行い、データ マッピング、参照データ管理、データライフサイクル管理、データリネージ、機密データの分類のためのコンポーネントが含まれています。
適切なデータカタログツールの選択
データカタログツールのメリットを最大限に引き出すには、適切なデータカタログ ツールの選択が極めて重要です。なので以下の要素を考慮しましょう:
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使いやすさ:ツールは、技術的なユーザーにとっても、そうでないユーザーにとっても、直感的で使いやすいものであるべき。
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自動メタデータディスカバリ機能:幅広いデータソースからメタデータを自動的に発見してカタログ化できるツールを探す。
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データリネージ追跡:データ変換を理解するために、そのツールに強固なデータリネージ追跡機能があることを確認する。
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データガバナンス機能:ツールのデータガバナンスポリシー、アクセスコントロール、コンプライアンス要件への対応をチェックする。
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統合能力:既存のデータインフラや他のデータ管理ツールとの統合性を検討する。
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拡張性とパフォーマンス:増大するデータニーズに応じて拡張でき、効率的に実行できるツールを選ぶ。
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ベンダーのサポートとトレーニング:適切なサポートとトレーニングのリソースを提供するベンダーを選ぶ。
- 料金設定:価格モデルをチェックして、予算に見合ったものであることを確認する。
データカタログツールでデータアナリストが得られるもの
いいデータカタログツールだと、データアナリストには以下のようなさまざまなことがもたらされます:
- データ発見の迅速化:データを探す時間が短縮され、分析により多くの時間を割くことができる。
- データのより深い理解:データのコンテクスト、意味、品質を総合的に理解できる。
- データ品質の向上:正確な分析を確実に行うために、データ品質の問題の特定および対処ができる。
- 連携の強化:適切なメトリクスを通じて、データの他のステークホルダーとより効果的に連携できる。
- より戦略的な焦点:データモデリング、分析、インサイトの生成など、より価値の高いタスクに集中するための時間を確保できる。
Integrate.io とデータカタログツール:強力な組み合わせ
強力な ETL(抽出、変換、格納)プラットフォームである Integrate.io は、直感的なコネクタによってデータカタログツールを完璧に補完します。データカタログツールがデータの発見と理解に重点を置くのに対し、Integrate.io はデータの移動と変換に重点が置かれており、この2種類のツールを統合することで、総合的なデータ管理エコシステムを構築することができます。また、Integrate.io は、データ変換に関するメタデータをデータカタログに入力することができ、データカタログは、データソースとターゲットに関する情報を提供することで、データ統合プロセスをガイドすることができます。
まとめ
データカタログツールは、データ製品の効率的なワークフローを通じてデータの可能性を最大限に引き出そうとするデータチームにとって非常に重要です。このようなツールでデータの発見、理解、ガバナンスが改善されることによって、データアナリストは、ダッシュボードと視覚化を通じて、より良いビジネス成果を実現できるようになります。適切な最新のデータカタログツールを選択してそれを Integrate.io のような他のデータ管理ソリューションと統合することで、データ分析能力は大幅に強化され、データサイエンスの可能性を最大限に引き出すことができるのです。
Q&A
Q: カタログ作成ツールとは何ですか?
A: データ管理におけるカタログツールとは、組織が機密データやその他のビッグデータ資産を整理、管理、理解するのに役立つソフトウェアアプリケーションです。一元化されたインベントリとして機能することから、利用可能なデータの総合的なビューと、データのコンテクスト、意味、品質、場所を説明する豊富なメタデータを提供します。これは、ユーザーが必要な情報を簡単に見つけてそれを理解し、利用できるようになる、全データの「カードカタログ」と考えてください。最新のデータカタログ作成ツールは、多くの場合、メタデータ検出のプロセスを自動化し、データリネージの追跡やデータプロファイリングの機能、データガバナンス機能などが備わっています。
Q: Apache Atlas はデータカタログですか?
A: はい、Apache Atlas はオープンソースのデータカタログおよびメタデータ管理ツールであり、データ資産に関するテクニカルメタデータとビジネスメタデータを収集するデータカタログの構築を支援するように設計されています。Atlas には、データガバナンス、データ発見、データ理解のための基盤が備わっており、柔軟で拡張可能なデータカタログソリューションを探している組織に人気です。
Q: SAP のデータカタログとは何ですか?
A: SAP エコシステムでは、データカタログは、他のデータカタログと同じ基本的な目的、つまりデータ資産の一元化された総合的なビューを提供するという目的を果たします。SAP は、SAP Data Intelligence や SAP Information Steward などのソリューションを通じて、データカタログ機能を提供しています。このツールで、SAP ユーザーは S/4HANA や BW/4HANA などの様々な SAP システムやその他の接続されたソースに存在するデータを発見、理解、管理することができます。また、このツールは、SAP のデータ統合およびガバナンスツールと統合し、SAP 環境に統一されたデータ環境を提供します。
Q: 誰がデータカタログを使いますか?
A: データカタログは、以下のようなさまざまなデータのステークホルダーにとって貴重なツールです。
- データ アナリスト:分析に必要なデータをサッと見つけて理解する。
- データサイエンティスト:機械学習モデルの構築とトレーニングに関連するデータセットを発見する。
- データエンジニア:データパイプラインの構築のためのデータソースと変換を理解する。
- データスチュワード:メタデータの管理、データガバナンスポリシーの確定、データ品質の確保を行う。
- ビジネスユーザー:レポート作成と意思決定のためにビジネス関連データへアクセスして理解する。
- データアーキテクト:組織のデータ環境を設計および管理する。
- コンプライアンス担当者:データフローを理解し、データプライバシー規制への準拠を確保する。
Q: SAP のカタログとは何ですか?
A: SAP エコシステム内では、「カタログ」という用語はコンテクストによって微妙に意味が変わる場合があります。SAP データカタログは上記の広範な概念を指しますが、SAP システムも以下のような特定の機能に対してカタログを使用します:
- 情報カタログ(BW/4HANAの場合):SAP Business Warehouse 環境内のデータモデルやデータソースに関するメタデータの整理や管理を行うのに使われる。
- ABAP Dictionary(DDIC):SAP ABAP 環境内のデータベーステーブル、ビュー、データエレメント、およびその他のデータオブジェクトに関するメタデータの中央レポジトリであり、SAP のアプリケーション開発とデータ管理の中核をなすコンポーネントである。
- マスターデータカタログ:顧客マスターデータや製品マスターデータなど、組織全体で共有される中核的なデータであるマスターデータを管理するのに使われる。