ビッグデータの活用は、組織が競争を勝ち抜くために使える最大の資産のひとつですが、ビッグデータが増え続けているにもかかわらず、ほとんどの組織はまだその能力を十分に活用できていません。なぜでしょうか?何百万ものデータソースがインターネット上や物理的に存在しているからです。そしてそのデータを取り込んで統合するのは、あっという間に膨大なものになる可能性があるのです。
データレイクを使えば、複数のソースからの生データを単一の中央ストレージ・レポジトリに統合することができますが、どんなに有能なデータチームであっても、大量のデータを統合する際に問題に直面することがあります。そこで本記事では、データレイクの ETL(抽出、変換、格納) ツールで、組織のデータ統合プロセスの効率化がどのように実現されるかを見てみましょう。
主なポイント5つ:
- ETL(抽出、変換、格納)の使用は、複数のソースからのデータをデータレイクに統合する最も効果的かつ効率的な方法である。
- データレイクへの統合には多くのメリットがある一方で一定の課題もあり、組織は、データ品質の問題、スケーラビリティの問題、異なるフォーマットを想定しておくべきである。
- データレイクにおける ETL ツールの使用は、効率化された分析と意思決定のために、様々なストレージレイヤーへのデータの取り込み、変換、格納に対応している。
- データレイクで ETL を最大限に活用するためには、ベストプラクティスに従う必要があり、それには、データソースの慎重な選択、インクリメンタルなデータの読み込みの実践、ETLのパフォーマンスのモニタリングと最適化、ETL プロセスの文書化などが含まれる。
- ETL ツールを使ってデータレイクにデータを統合するには、データインジェスト、変換、メタデータ管理、統合、読み込み、アクセス、分析が必要。
本記事では、データレイク ETL ツールで組織のデータ統合プロセスの効率化がどのように実現されるかを見ていきます。また、よくある落とし穴を回避し、データレイク・イニシアチブの ROI を最大化する方法についても見ていきましょう。
ETL ツールの使い方のニュアンスを理解することで、組織は効率的なデータ統合を実現し、より良い意思決定を行うことができるのです。
データ統合とは
データ統合には主に「複数のソースからのデータを統合する」のと、「統一されて一貫性があり、簡単にアクセスできる形式でのデータの提示」という2つのプロセスがあり、そのプロセスによって、組織はデータを分析やレポート作成に使用できるようになります。
データ統合は、以下のような理由からあらゆる組織にとって不可欠です:
- サイロ:組織内のデータが別々のシステムやデータベースに保存されてさまざまな部門に分散している場合、情報が断片化する可能性があるが、データ統合ツールで、さまざまなソースからのデータを単一の統一されたプラットフォームに統合することによって、そのようなサイロを解消することができる。
- 品質:複数のソースからのデータを統合すると、不整合、記録の重複、欠損値が発生する可能性があるが、統合では、収集したデータを分析に使う前に、クリーニング、変換、検証が行われる。
- インサイト:データ統合により、多様なソースからのデータを統合し、定期的に更新することで、意思決定者は最新の情報を得られる。
データインジェストとデータ統合
データ統合とデータインジェストはどちらも複数のソースからのデータを扱いますが、この2つのプロセスはデータ管理の役割が異なります。先に説明したように、データ統合は様々なデータソースからのデータを統合し、一貫性のある統一されたフォーマットに変換することに重点を置き、それによって分析と意思決定が実現します。そしてこのプロセスには、ETL(抽出、変換、格納)が含まれ、さまざまなアプリケーションやシステム間でのデータの一貫性と使いやすさが保証されます。
一方、データインジェストとは、複数のデータソースから未加工のデータを収集、インポート、処理し、さらなるデータ分析のためにストレージシステムやレポジトリに転送することを指します。データインジェストはデータ統合とは異なり、元の形式に変更を加えることなく生データを扱います。
データレイクとは
画像提供: Qlik
データレイクとは、大量の生データをそのままの形式で保存する一元化されたストレージレポジトリのことであり、そのデータは、データベース、IoTデバイス、SaaSデータ、ログファイルなど、さまざまなソースから来るものです。また、データレイクは、構造化データ、半構造化データ、非構造化データなど、あらゆる形式でデータを保存します。制約がないため、意思決定者は簡単にデータを分析し、ML(機械学習)を適用し、データ主導の意思決定を行うための貴重なインサイトを得ることができます。
今まで行ったことのある湖を思い浮かべてみてください: 雨、川、雪、溶けた氷など、さまざまな水源からの水を含んでいますよね。データレイクも、水ではなく「データ」という形式ですが湖と同じことです。
データウェアハウスとは
データウェアハウスは、データ分析や BI(ビジネスインテリジェンス)に対応するために、さまざまなデータソースから集約された処理済データのストレージシステムであり、ログファイル、データベース、アプリケーションシステムなど、複数のソースからデータを取得します。また、データウェアハウスには、それぞれがデータを分析しやすいように「列」と「行」に整理している複数のデータベースが含まれていることがあります。
データウェアハウスをダムや貯水池に例えて考えてみましょう: その貯水池の水はさまざまな水源から来ますが、不純物を取り除くべく貯水前に処理されないといけないですよね。
データレイク と データウェアハウス
データレイクとは異なり、データウェアハウスではデータを集約して保管する前に、前処理と変換が必要です。データが構造化された形で保存される場合だと、利点や欠点があり、例えば、データは理解しやすく利用しやすくなる一方で、組織がデータ分析のためにデータを操作する方法は制限されます。それに対し、データレイクに生のデータが改ざんされていないオリジナルのフォーマットで保存されている場合、データ分析の汎用性と柔軟性が高まります。
データレイクとデータウェアハウスの違いは他にもあります:
- ユーザー:データレイクは、その未加工で洗練されていない形式から、主にデータエンジニアやアナリストといった「データに精通した専門家」が高度なデータ分析のために使用する。一方、データウェアハウスは、レポート作成や分析のためのデータを扱った経験が全くまたはほとんどないようなユーザーが使うのに適している。
- スキーマ:データレイクはスキーマオンリード(格納前のデータが適合する必要のある事前定義されたスキーマがないこと)のやり方を採用しており、データは前処理されず、データを照会する際に変換が適用される。対するデータウェアハウスはスキーマオンライト(データの蓄積(書き込み)の時点で、データベースの構造(スキーマ)がすでに決定されていること)のやり方を採用し、格納前にデータの前処理と変換が必要。
- コスト:データウェアハウスは、専用のソフトウェア、ハードウェア、データを処理する人員が必要なため、コストが高くなる。対するデータレイクは、データをそのまま保存するためコスト効率がいい。
では、データレイクでのデータ統合するのは難しいのでしょうか。
データレイクにおけるデータ統合の課題
データ統合は多くのメリットをもたらしますが、データレイクでデータを統合する際に想定すべき課題もあります。
よくある問題で組織が遭遇する可能性があるのは、以下のようなものがあります:
- データ品質の問題:さまざまなソースからデータが流れ込んでくると、不整合が生じる。これは、入ってくるデータの種類をフィルタリングできない場合に特に当てはまることから、データレイクには、記録の重複、不十分なデータ、使えないデータといったデータ品質の問題が発生する可能性がある。
- スケーラビリティ(拡張性)の問題:どのようなシステムにも言えることだが、適切なスケーラビリティ・メカニズムがなければ、データレイクは大量のデータを継続的に供給されたときにすぐに負荷がかかり、その結果、システムの速度が下がってパフォーマンスの問題が発生する。
- フォーマットの違い:データレイクでは、さまざまなソースからあらゆる種類と形式のデータが集まっており、そのデータを全て統一された利用可能な形式に変換するには、時間も労力もかかり、専用ツールや専門知識が必要。
ETL とは
ETL(抽出、変換、格納)とは、データ統合プロセスのことです。
ETLプロセスには、以下のように、データの抽出、変換、ターゲットシステムへの格納という3つのパートがあります:
- 抽出:抽出には、リレーショナルデータベース や 非リレーショナルデータベース、Webアプリケーション、API など、さまざまなソースからデータを引き出すことなどがある。
- 変換:抽出されたデータは、データのクリーニングと検証、記録の重複排除、データ変換の適用などを行い、一貫性のある利用可能な形式に変更される。
- 格納:格納プロセスでは、変換されたデータを保存先のデータストレージレポジトリに移動する。
ETL と ELT およびその他の統合手法の比較
ETL はデータ統合において広く使われている手法の一つですが、組織のニーズやワークロードによっては、以下の手法も有効です:
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ELT(抽出、格納、変換):このアプローチは ETL と密接に関連しているが、統合プロセスの順序が変わっており、ツールはデータを抽出した後、生データをターゲットシステムに格納し、変換が適用される。この方法は、最新のデータプラットフォームの処理能力を活用できることから、大量のデータを扱う場合によく使われ、データガバナンスの向上、データ処理速度の向上、パフォーマンスの向上、費用対効果などのメリットがある。
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データ仮想化:この手法では、データを物理的に移動したり中央レポジトリに保存したりすることなく、さまざまなデータソースからのデータの統一されたビューを提供する仮想レイヤーを作成する。この手法はリアルタイムのデータアクセスに有効で、大規模なデータの移動や保存の必要性が軽減される。また、アナリティクスの向上、データに詳しくない専門家にとっての使いやすさ、費用対効果の向上など、導入時に多くのメリットをもたらす。
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データレプリケーション(複製):このプロセスでは、複数のシステム間で同じデータが複製され、多くの場合、過去のデータのオフロードやアーカイブ、データバックアップの作成に使用される。また、確実なデータ復旧やセキュリティ、データアクセスの高速化、信頼性の向上など、さまざまなメリットがあり、このタイプの統合は、ディザスタリカバリを優先する組織や複数の拠点を持つ組織に最適。
- CDC (変更データキャプチャ):この方法では、データセット全体を複製するのではなく、時間の経過に伴う新しいデータの変化のみをキャプチャする。データベースを更新するための効率的な方法であり、レプリケーションの作業負荷がなくなる。組織が複数のシステムやデータベースをリアルタイムで同期させる必要がある場合に最適であり、データウェアハウスや BI の向上、ソースシステムとターゲットシステム間の待ち時間の短縮、監査可能性やスケーラビリティの向上などのメリットがある。
ETL のユースケース
ETL は、様々な産業や分野で利用されています。ETL の以下のユースケースによって、組織は効率的にデータを統合、変換、保存し、効率的な分析と情報に基づいた意思決定を行うことができます:
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小売とEコマース:この分野のビジネスにとって、販売動向、顧客行動、在庫管理、カート放棄率はすべて重要なデータであるが、そのデータは統合および変換され、単一のストレージシステムに格納された場合にのみ有用である。ETL は、ECプラットフォーム、CRM(顧客管理システム)、POS 端末(販売時点情報管理システム) からのデータを統合し、それによって小売業者は、サプライチェーンマネジメント、マーケティングキャンペーン、価格戦略を最適化するための貴重なインサイトを得られる。
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製造:ETL プロセスは、生産ライン、品質管理、サプライチェーン管理システムからデータを集めて変換する。製造業者はそのデータを統合することで、設備のパフォーマンスの監視、生産プロセスの最適化、コスト削減と効率向上のためのデータ主導の意思決定を行うことができる。
- エネルギーと公益事業:エネルギーおよび公益事業分野で は、スマートメーター、センサー、その他の IoT デバイスからのデータを過去の消費データや気象情報と統合するために ETL が 使用されており、この統合データにより、需要予測、グリッド最適化、エネルギー効率化イニシアチブのための高度な分析ができるようになり、より効果的なリソース管理に貢献する。
データレイクにおける ETL ツールの仕組み
【Architecting an Enterprise Data Lake, A Covid19 Case Study(エンタープライズ データ レイクの構築、新型コロナウィルス感染症のケース スタディ)】と名付けられたケース スタディでは、一般にアクセス可能なデータセットを使ってデータをデータ レイクに統合する実験が行われました。ETLツールは、WHO(世界保健機関)や Worldometer 公式サイトなど、さまざまなソースからデータを抽出し、そのデータソースは、世界中の感染者の状況や、データレイクに統合された各国の現状に関する情報を提供し、そのデータは、確定症例数、回復者数、死亡者数などの分析に使用されました。
以下は、データ統合の主な段階ですが、これは ETL ツールがデータレイクでどのように機能するかを示すものです:
1.データインジェスト
データレイクは、Web サイト、SNS チャンネル、データベース、ファイル、API などのさまざまなソースから、構造化、半構造化、非構造化データ形式を集めます。
2.データ変換
データレイクに取り込まれると、ETL ツールはデータをクリーニングして標準化し、プロセス内でのデータのフィルタリング、集約、変換、強化など、ビジネスに合わせてデータを作り変えます。
3.メタデータの管理
メタデータ管理はデータレイクにおいて不可欠であり、データを分類するためのラベルの適用、データセットのカタログ化、系統情報の取得など、さまざまなプロセスが含まれます。
4.データ統合
データレイク ETL によって、さまざまなシステムからのデータ統合、不整合の解消、データランドスケープの包括的なビューの作成ができ、より正確で一貫性のある分析ができるようになります。
5.データ読み込み
ETL ツールは、処理されたデータをデータレイク内の適切なストレージレイヤーに格納しますが、それには組織のデータストレージ戦略と分析要件に応じて、カラム型ストレージ、SQLデータベース、分散ファイルシステムへのデータ読み込みが含まれます。
6.データアクセスと分析
最後に、データレイク ETL ツールは、様々な分析ツール、BI プラットフォーム、ML(機械学習)フレームワークとのシームレスな統合を実現するコネクタや API を提供することで、データアクセスと分析をしやすくします。それによって、企業はデータレイクに保存されたデータからインサイトを引き出しやすくなり、それがより多くの情報に基づいた意思決定や、ビジネス価値の向上に繋がります。
データレイクにおける ETL ツールのベストプラクティス
ETL を使ってデータ管理と分析を最適化するには、非効率なプロセスと結果を避けるための戦略的アプローチが必要です。ここでは、データレイクで ETL ツールを使うことによって確実にデータ品質の向上や意思決定能力の強化を行うために、組織が採用できるガイドラインをいくつかご紹介します。
データソースの慎重な選択
データソースが全て組織のデータストアに付加価値を与えるわけではないので、自社のビジネスモデルやニーズに照らし合わせて、さまざまなソースの妥当性を評価する必要があり、それには以下のようなことをすべきです:
- 確実にデータソースが継続的に更新されているようにする。
- オンラインで調達する場合は、確実にデータソースがオンライン上で確固たる存在感を示しているようにする。
- 定評のあるデータベンダーとの提携を検討する。
インクリメンタル(増分)なデータ読み込みの実践
大量のデータを一度に処理するのは非常に時間がかかり、多くのリソースを必要とします。なので ETL ツールを使う場合は、変更または新規のデータのみを処理するインクリメンタルなデータ読み込みの手法を使うことを検討すべきです。
インクリメンタルなデータの読み込みを実現するには、体系的なアプローチと、CDC(変更データキャプチャ)、タイムスタンプ、バージョニングなどの適切なテクニックを使う必要があります。CDC を使うと、データが変更されるのを監視することによって、大元のデータの変更をキャプチャして追跡することができます。また、タイムスタンプを使うと、大元のデータ内の各記録にタイムスタンプを関連付けて、その記録が最後に変更された日時を示すことができます。そしてバージョン管理では、大元となるデータ内の各記録にバージョン番号を割り当て、変更が発生するとバージョン番号がインクリメント(増加)されます。
ETL パフォーマンスの監視と最適化
ETL ワークフローは、注意深く最適化されなければ、非効率になる可能性があることから、このようなツールがどのように機能するかのチェックや、必要に応じた定期的な調整がベストプラクティスになります。
以下のようなことをするといいでしょう:
- CPU、メモリ、ディスクのリソースを重要なステップや変換に多く割り当てることで、リソースの割り当てを調整する。
- ETL プラットフォームが提供するモニタリングツールや機能を使って、ETL ワークフローのパフォーマンスを追跡する。
- 並列処理技術を活用して、ETL ワークロードをより小さなタスクに分割し、それを同時に実行する。
- 日付範囲、地域、顧客セグメントなどの特定の基準に基づいて、データをより小さなサブセットまたはパーティションに分割する。
ETL プロセスの文書化
ETL プロセスとワークフローの包括的な文書化の維持は、ビジネスの継続性と成長に不可欠です。部門間で知識を共有することで、チーム間の一貫性が確保され、組織内のデータサイロの問題が解決されますからね。
Integrate.io で複数ソースのデータをデータレイクに統合する
ETL ツールを使って複数のソースからデータレイクにデータを統合するのは効率的ですが、データ品質の問題、スケーラビリティの問題、フォーマットの不一致といった課題も想定しておく必要があります。なので、ETL を導入する際には体系的なアプローチをとり、最適なツールだけを使うことが重要です。
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