多くの企業でクラウド統合について理論的に語られていますが、クラウド技術は机上の空論ではなく、ビジネスのあり方を変えつつある、急成長中のテクノロジー分野なのです。
そこで本記事では、オンサイトの技術をさらにクラウドに移行したときに何が起こるかについて、より現実的なビジョンを持つことができるように、「理論」から「実践」へと移行していきます。

主なポイント:

  • クラウドプラットフォームの統合により、IT エコシステム内の異種アプリケーション、データベース、その他のシステムを接続する機会が増える。
  • 情報をクラウドに移行しつつ、ローカルサーバーにも保存することで、データのセキュリティとリカバリーが改善される。
  • クラウドプラットフォームの統合で、ML(機械学習)、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、その他のスタートアップ技術が中小企業にとってより身近なものになる。
  • クラウドコンピューティングのニーズは組織ごとに異なるため、サービスプロバイダーを選択する前に、そのニーズを理解しなければいけない。
  • ETL(抽出、変換、格納)ソリューションは、クラウドプラットフォームの統合において重要な役割を果たす。

目次

クラウドプラットフォームの統合について

クラウドプラットフォームの統合には「さまざまなクラウドサービスを統合する」のと、「クラウドサービスとオンプレミステクノロジーを統合する」という2つの意味があり、どちらの戦略にも長所と短所があります。

例えば、すでにオンサイト IT インフラストラクチャがある場合は、セキュリティコントロール強化のためにそれを使い続けることができますが、オンプレミスシステムを利用している場合でも、承認されたユーザーが場所に関係なくアクセスできるようにするクラウドプラットフォームと統合するのは理にかなっています。

そして、クラウドプラットフォームの統合プロジェクトで遭遇する可能性の高いコンポーネントには、以下のようなものがあります:

これは完全なリストではありませんが、一般的な組織が遭遇するコンポーネントのほとんどを押さえており、システムが複雑であればあるほど、より多くのコンポーネントが含まれることが予想されます。

よく使われているクラウド統合の種類

最もよく使われている選択肢として、以下の3つのクラウド統合戦略が際立っています:

1.データ統合

今日の組織は、ECサイト、SNSプラットフォーム、ペイパークリック広告キャンペーンなど、多様なソースからデータが集められていますが、残念ながら、そのソースの多くではさまざまなデータ形式が使われています。なので例えば Facebook と Salesforce のデータを同じ BI(ビジネスインテリジェンス)ツールに流したとしても、意味のある結果は得られません。そして BI ツールは、さまざまなデータタイプをどう扱えばいいのかさえ分からないかもしれません。

なので、データ統合を成功させるには、多様なソースから単一のデスティネーションへのデータの ETL(抽出、変換、格納)が必要であり、専門的なコーディングやデータ分析の経験がないユーザーでも利用できるノーコード ETL ソリューションは、クラウドでのデータ統合の人気オプションです。

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2.アプリケーション統合

2019年、平均的なデスクワーカーは仕事中に6つのアプリケーションを使っていましたが、2023年の調査によると、今では平均11個のアプリが使われています。これは、従業員が日々使うソフトウェアのほぼ倍です。

アプリケーションの乱立は、使っているソフトウェア間でデータを共有したい場合に深刻な問題となります。ほとんどのアプリケーションには、チームが使っている他のアプリケーションのための統合機能は内蔵されていません。非常に多くのアプリがあると、各クライアントがどのような統合を好むかをデベロッパーが把握するのはほぼ不可能です。

そこで、クラウドアプリケーション統合で、サードパーティーのソリューションを通じてデータを移動することによってこの問題を解決でき、ソリューションが、あるツールからのデータを別のアプリまたは中央れポジトリに読み込む前に変換してくれます。

3.API 統合

API 統合により、例えば、Marketo のデータを API 経由で Salesforce に送ることができるといったような、アプリケーションが相互に通信できるようにする一種の仮想ポータルが作成されます。​​​​​​この戦略では、ビジネス データを変換し、アプリを接続して、機能を調整できるようにします。

また、カスタム API 統合はかなりのコーディング経験が求められることがあるため、誰にでもうまくいくわけではありませんが、幸い、ほとんどの作業を自動的に実行できるノーコードおよびローコード API ツールをリリースするデベロッパーが増えてきています。

クラウド統合の一般的なメリット

クラウド環境を導入したからといって、企業の IT 上の課題がすべて解決するわけではないでしょうが、多くの企業は、クラウド統合によって次のようなメリットが得られると考えています:

  • ワークフローとビジネスプロセスをより効率的にする自動化の改善
  • ユーザーニーズに対応するリアルタイムのスケーラビリティ
  • 遠隔地からでもデータにオンデマンドでアクセス可能
  • 迅速なディザスタリカバリのためのリモートのクラウドストレージ
  • データストレージ、クラウドベースのアプリケーション、ML(機械学習)プラットフォーム、ビッグデータ分析などのクラウドコンピューティングツール間のより良いコラボレーション

ただし、これは潜在的なメリットの表面をなぞったに過ぎず、得られる機能は、ユースケース、提携するクラウド・サービス・プロバイダー、選択する戦略によって異なります。

クラウド統合の戦略的計画

意思決定を通知し、確実に目標を達成できる戦略計画を作成するまでは、さらなるテクノロジーのクラウドへの移行を開始すべきではありません。 クラウド統合の戦略計画を策定する際には、考慮すべきことがたくさんありますからね。 以下のような広範なトピックから始めて、進むべき道を絞っていきましょう。

ビジネスニーズの評価

戦略的プランニングには、ビジネスニーズを正確に調べることが求められますす。

ビジネスごとに要件は微妙に異なりますが、自社の要件を評価するには、まず以下を評価することから始めるといいでしょう:

  • データ構造を見直し、BI(ビジネスインテリジェンス)やその他のアプリケーションに送信する前にフォーマットを変換できるコネクタが必要かを判断する。
  • クラウドに統合したいテクノロジーの完全なリストを作成する。
  • 数年先を見据えて、ビジネスの今後のテクノロジーのニーズについて知識に基づいた推測を行う。

ビジネスのニーズを評価したら、クラウドプラットフォームを統合するための戦略的計画の策定に取りかかることができます。

正しいクラウド統合プラットフォームの選択

検討すべきクラウド統合プラットフォームはたくさんありますが、選択肢を比較する際には、以下の4つの要素に優先順位をつけましょう。

  1. 互換性 - 既存の技術アセットはクラウド統合プラットフォームと互換性があるか。
  2. スケーラビリティ(拡張性)- ある時点で、追加のコンピューティング・パワーやその他のリソースにアクセスする必要が生じることか考えられるが、その際にクラウド統合プラットフォームは、必要以上にコストをかけずにリソースにアクセスできるよう、迅速にスケールアップやスケールダウンを行えるか。
  3. コスト - クラウド統合プラットフォームの価格は予算に合っているか、またオンプレミスのホスティングコストを削減できるか。
  4. セキュリティ - クラウド統合プラットフォームは、業界のガイドラインを満たすか、それを上回るセキュリティを確保しているか。

また、ユースケースに最適なツールの採用を妨げ得るベンダーロックインにも注意が必要です。同じ会社のソリューションしか使えないようなクラウド統合プラットフォームは選びたくないでしょう。柔軟性が制限されて、エコシステムが必要以上に高価になる可能性がありますからね。

クラウド統合のベストプラクティス

ベストプラクティスに従うことで、クラウド統合戦略を成功に導くことができます。そして留意すべき最も重要なベストプラクティスには、以下のようなものがあります:

  • 改善の機会を見出すための、クラウドソリューションの継続的な監視。
  • 接続されたクラウドのアセット間のセキュリティを強化するためのエンドツーエンドの暗号化の適用。
  • セキュリティを損なうことなく新しいクラウドのアセットを使うためのチームメンバーのトレーニング
  • 自社に最適なものを決めるためのハイブリッドクラウド、マルチクラウド、プライベートクラウド、パブリッククラウドの各オプションの比較
  • レイテンシ、フェイルバック、スケーリングの可能性、コンピューティング能力などのパフォーマンス指標への注目
  • クラウドエコシステムに適合するデータ統合ツールの比較

クラウド統合における課題の克服

クラウド統合は、より深いインサイトを引き出し、ワークフローを効率化し、新しい市場を獲得できる可能性を秘めています。ただ、IT エコシステムの多くをクラウドに移行する際に、何らかの課題に当たってしまう可能性があります。そして、多くの組織はすでにこの道を進んでいることから、よくある課題を克服するための検証済みの方法があります。

データセキュリティと法令遵守

データセキュリティと法規制の遵守は、信頼できるクラウドサービスのプロバイダーを選ぶことから始まります。選択したサービスプロバイダーが以下に準拠していることを確認してください:

自身や現在の顧客が EU やカリフォルニアにいないとしても、この規制を満たしておくのはいいアイデアです。それでデータセキュリティが改善され、将来の法規制への備えができ、ビジネスの成長がしやすくなるはずです。

また、業種によっては、サービスプロバイダーがどのように以下のようなセキュリティとコンプライアンスを保証しているかについて、話を聞く必要があるかもしれません:

さまざまな業界で事業を行う場合は、顧客データを確実に保護して適切なガイドラインに従うべく、その業界の規制を調べましょう。

統合の複雑さ

クラウド統合は、より多くのアセットを採用するにつれて、ますます複雑になっていく可能性があります。そして最終的には、統合の複雑さが、効率化されたワークフローやデータ主導の意思決定の妨げになることがあり得ます。

統合が複雑になって手に負えなくなる前に、以下のヒントを参考にしてください:

  • 業界大手である Oracle は、事前構築済みの統合を備えたツールの採用を長年提唱している。なので、クラウド エコシステムに必要な事前構築済みの統合がない場合は、
  • その統合を技術スタックに追加できる ETL ソリューションを採用すべきである。
  • できるだけ早くニーズを評価して優先順位を特定することで、それを中心に統合計画を立てることができる。
  • 可能な限り多くのプロセスに自動化を取り入れる。あまり監視しなくても新しいバージョンに独自にアップデートできる資産を選択する場合は特にである。
  • 使用状況を監視し、不要なツールがあれば削除する。
  • ユースケースに合ったリソースを推薦してくれるサービスプロバイダーと協力する。

コスト管理

サービスの質を犠牲にすることなく、できるだけコストを抑えたいと思うのは当然ですが、クラウド サービス プロバイダーは、ロケーションから使用するアプリケーションに至るまで、すべてに応じて異なる可能性がある複雑なコスト計算式が使われることが多いため、この目標を達成するのは必ずしも簡単というわけではありません。

なので、必要なものを把握することがクラウド統合時のコスト管理の第一歩であり、理想としては、以下のことを把握しておくべきです:

  • どのようなソフトウェアを使いたいか、その際にライセンス料が必要か
  • 現在のデータセンターから過去のデータを移行する必要があるか
  • どれくらいのメモリと計算能力が必要になるか
  • 業界に特化した追加サービスが必要か

AWS、Microsoft、Google などの主要プロバイダーから見積もりを取ることで、コストの比較を始めるのもいいでしょう。

正確な見積もりを取るために十分な時間を確保しましょう。物事は非常に複雑になる可能性がありますからね。例えば、AWS(Amazon Web Services)の価格計算機から見積もりを取る場合、どのサービスが必要かの選択が必要であり、Amazon にはアカウントに追加できるサービスが何十種類もあります。ちなみに、Google や Microsoft も同様です。

以下から見積もりを取ることができます:

そして、サービスを選択した後も、使用量とコストを監視し続けるべきです。クラウドサービスの中には、使用量が過大評価や過小評価されているものもあるかもしれないことから、継続的にモニタリングすることで、アカウント、費用、ニーズの整合性を保つことができます。

これらのプロバイダーは従量課金モデルを採用しているため、いつでも戦略を変更できることを頭に入れておいて下さい。また、ある月の使用量が多いからといって、翌月の料金が高くなるとも限りません。

クラウド統合の今後の動向

テクノロジーの未来はクラウドで起こります。では、アセットやプロセスをクラウドに移行した後は、どのような変化が予想されるのでしょうか。

新たなテクノロジー

ML(機械学習)と AI(人工知能)の技術は何十年も前から存在していますが、企業にとって非常に重要なツールになり始めたばかりであり、すでに半数以上の企業で不正検知やサイバーセキュリティのために利用されています。

このようなテクノロジーやその他の新しいテクノロジーは、クラウド統合の管理方法や、クラウド経由でアクセスするサービスに影響を与えるでしょう。

クラウドベースの MLと AI ソリューションは、オンプレミスのソリューションよりもはるかに手頃で柔軟です。例えば、Google Cloud の AI・ML スイートを使いたいとします。同社のオプションでは、ディープラーニングコンテナ、クラウド GPU、カスタム ML モデルトレーニングなどを利用できます。また、クラウドを通じてこれらのサービスにアクセスするため、オンサイトでタスクを実行するのに必要な機器を購入する必要はなく、莫大な初期費用がかからず、改良されたものをその都度導入することができます。

IoT(モノのインターネット)も、より多くの企業がクラウドに移行するにつれて、ますます普及していくでしょう。GSMA社 のレポートによると、 IoT 接続は 2021年の151億から2025年には230億になると予想されています。

IT エコシステムに IoT デバイスが追加されれば、企業はより多くのサービスをクラウドに移行せざるを得なくなります。IoT は、クラウドベースのシステムのサポートなしには機能しませんからね。それには課題がいくつかあるかもしれませんが、企業はこれまで以上に多くのデータにアクセスできるようになるでしょう。適切な戦略によって、IoT の導入で BI に関するインサイトがより正確で有用なものにするはずです。ただそのためには、より多くのクラウド機能を受け入れる必要があります。

クラウド統合の予測

近い将来、クラウド統合に影響を与えるトレンドが出てきそうです。以下に例をいくつか挙げてみましょう:

  • より多くの組織がハイブリッド クラウド や マルチクラウド エコシステムに慣れてくる。
  • IoT の普及に伴って処理能力が上がる。
  • 膨大な量の情報の処理のために迅速に拡張できる ML や AI ツールが増える。
  • 特に金融業界やヘルスケア業界における規制の強化により、企業はハッカーの手にかかることなくデータを活用できるようになる。

Integrate.io ができること

クラウドプラットフォームの統合には課題がいくつかありますが、潜在的なメリットがあるため、あらゆる組織にとって魅力的です。クラウドがどのように機能するのか、サービスプロバイダーがどのようにデータを安全に保つことができるのか、といった情報を得た上でアプローチすることが、戦略を成功に導く助けとなるはずです。

それでも、データ統合には難しいハードルがあります。そこで Integrate.io で、データ統合戦略を根本的に改善することによって、前に進むことができます。また、Integrate には、ETL、リバースETL、データベース複製、API 生成、データオブザーバビリティのためのソリューションがあり、さらに、ソースからデータを取得してそのデータを有用な形式に変換し、一元化された場所に格納するための 150以上のコネクタのライブラリがあります。そしてこのプラットフォームに、ETL パイプラインを構築するためのノーコードアプローチがあることから、誰でもトレーニングなしでデータソースを接続できるということになります。

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Q&A

Q. クラウド統合は企業の IT コストを削減できるでしょうか。

A. クラウド統合は、コンピューティングサービスのコストを下げる可能性を秘めていますが、より費用対効果の高い戦略を保証するものではありません。なので、コスト削減の機会を見つけるには、クラウドサービスのオプションを比較すべきです。例えば AWS(Amazon Web Services)が Microsoft Azure や Google Cloud よりも低コストであることがわかるかもしれませんし、別の組織では、Amazon よりも Google の方コスパがいいかもしれません。そしてそれはニーズや何を期待するかによります。

また、純粋なクラウドベースか、オンプレミス機器を含むハイブリッドクラウドモデルのどちらを選ぶかも、コストに影響します。

Q. クラウド統合イニシアチブの成功はどのようにして測るのでしょうか。

A. クラウド統合イニシアチブの成功を測る方法は数多くあり、例えば以下のような方法があります:

  • 自社サービスからクラウドサービスへ移行することで削減できるコスト
  • 統合後の収益増加の有無
  • 個人、部門、組織全体の生産性の向上度
  • IT エコシステムによるより強固なデータセキュリティの実現の有無

Q. クラウド統合はデータセキュリティにどのような影響を与えるのでしょうか。

A. クラウド統合は、多くの場合、オンプレミスのサーバーが提供するよりも強固なデータセキュリティを提供します。また、クラウド統合では、複数のレベルでデータセキュリティが確保され、通常、各コンポーネントには独自のセキュリティプロトコルが使用されます。ハッカーがアプリケーションへの侵入に成功しても、データベースにアクセスできるとは限りませんが、クラウドに統合したからといって、セキュリティが確実によくなるわけではなく、新たなトレンドを先取りするサービスプロバイダーを選ぶ必要があります。