REST API は、その柔軟性と拡張性から人気が上がり続けている API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)です。本ガイドでは、プロのように REST API を文書化する方法を概説し、作業をできるだけ簡単にするためにプロセスを明確かつ簡潔にご案内します。

基本的なことから、盛り込むべき内容、コツやヒントまで、完璧なドキュメントの作成に必要なことを本記事ですべてお伝えします。さらに、ドキュメント作成プロセスを最適化し、連携を改善する Swagger や RAML などのツールについても見ていきます。

主なポイント5点

  • REST API は、そのシンプルさ、モジュール性、幅広いアプリケーションとの統合のしやすさから支持されており、旧来の RPC ベースの API に比べて大きな利点を提供しています。
  • 効果的な REST API ドキュメンテーションは、ガバナンス、シームレスな連携、デベロッパーによる API の迅速な理解と統合を保証するのに不可欠です。
  • API ドキュメントのよくある問題点には、複雑な言語、例の欠如、不正確さ、登録ユーザーのみのアクセシビリティなどがあり、それで潜在的な採用者を遠ざけてしまう可能性があります。
  • REST API を文書化するためのベストプラクティスには、明確な計画、重要なセクションの優先順位付け、一貫性とシンプルさの維持、双方向性の追加、経験豊富な読者と入門レベルの読者の両方に対応することなどがあります。
  • Swagger や RAML のようなツールのドキュメンテーションへの活用や、業界標準の遵守、定期的な更新の確保は、効果的でユーザーに優しい API ドキュメントを作成するのに非常に重要です。

REST API を選ぶ理由

以前は、API は通常 RPC(リモート・プロシージャ・コール)を中心に開発され、遠隔のサーバーにリクエストを送信してプロシージャを実行していました。ユーザーにとっては、これはローカル関数と同じように動作しているように見えますが、HTTP プロトコルのコネクションレスな性質により、API を Web 上にデプロイする際に問題が発生していました。

一般的な回避策として、RPC と同じように機能するテクノロジースタックの使用というのがあり、それによってデベロッパーは Web への移行を速やかに行えるようになっていました。ただそれだと、デベロッパーは非効率的なコードを作成することになります。そこでその解決策として REST(REpresentational State Trafer)があるのです。

REST は非常にシンプルで汎用性が高く、モジュール化されているため多くの人に好まれています。特に Python のような汎用プログラミング言語でコーディングする場合だと、RESTは習得しやすいです。

そしてデベロッパーは、コードを何行も記述することなく、個々のモジュールの更新や支払いゲートウェイの統合、ドキュメントの生成に必要な機能をすべて得られます。それは個人のデベロッパーにとっては新鮮な空気が吹き込まれるような感じですが、新しいソフトウェアを書いたり、古いソフトウェアを作り直そうとしている大規模な組織にとっては救世主となり得ます。

REST の仕組み

REST は、簡略化された HTTP コールを使って複数のマシン間で通信するソフトウェア・アーキテクチャ・スタイルであり、RPC や CORBA と比べると、それほど複雑ではない方法です。また、REST では、呼び出しは全てメッセージベースで、HTTP に依存して、わかりやすいリクエスト/レスポンス方式で記述されます。

これは、API がクライアントサイドのテクノロジーに依存せず、様々なアプリケーションやデバイスからアクセスできるので、効果的に機能します。そしてこれによって、クライアント側のスタックに長期的に結び付けられず、簡単に再利用や拡張をできるインフラストラクチャをデザインすることができるようになります。

REST はまた、キャッシュに対応しており、完全にステートレスです。同様に、REST API により、最適なテクノロジを使ってフロントエンドとバックエンドを独立して開発できる分離されたアーキテクチャができるようになり、それによってフルスタックのホスティングが実現し、デベロッパーの作業が楽になります。これは、このような多様なテクノロジーを一緒にホストして実行するのに必要なインフラストラクチャを REST が提供することによって実現され、それでテクノロジーの選択における柔軟性が高まり、更新や移行がしやすくなります。

REST API ドキュメントについて

REST API ドキュメントは、API の使い方を説明する参考資料であり、API が何を行い、どのように動作するかについてデベロッパーが知る必要があることがすべて含まれた、事実上の技術マニュアルです。
そしてこれには、個々のエンドポイントやパラメータ、エラーメッセージ、API がどのように実装されているかについての詳細なコメントや説明といった要素が含まれます。

APIドキュメンテーションは、ガバナンスの観点から不可欠であるだけでなく、特に新しいデベロッパーがプロジェクトに参加する場合に、シームレスな連携の確保のためにも極めて重要です。さらに、オンラインで利用できる既製のテンプレートが豊富にあります。これは、API がさまざまなソフトウェア製品に使用される可能性が高いことから便利であり、つまりは、初期のデベロッパー以外でもより多くの人が API の仕組みを知る必要があるということでもあります。

詳細な REST API ドキュメントにより、API を理解するのに必要な時間が短縮され、それによって生産性が上がり、デプロイ時間が短縮されます。それで 最小限の障害でさまざまなユースケースに使えるようになり、API がより身近になるのです。

デベロッパーが API ドキュメントを敬遠する理由

通常、デベロッパーが特定の API を敬遠する場合、それはおそらくそのドキュメントが不十分だからでしょう。たとえその API が素晴らしいソフトウェアであったとしても、ドキュメントが不十分だと、他のソフトウェア製品と統合しようとしたときに問題が発生する可能性がありますからね。

API ドキュメントに関してよくある落とし穴には、以下のようなものがあります:

  • ドキュメントが、人間が読める簡単な言語で書かれていないため、書いてあることに従いにくい時がある。これは、ドキュメントが自動生成されていたり、デベロッパーによってコメントが急かされていたりする場合によくある問題である。例えば生成 AI は API ドキュメントを作成する際に非常に便利だが、デベロッパーが書く明確で情報に基づいた説明の代わりにはならない。
  • API ドキュメントに、コードサンプルがほとんど、あるいは全く提供されていない場合、従うのが面倒になることもある。これは、ドキュメントに適切で理解しやすい例ではなく、過度な説明が提供されている場合によく起こり得る。
  • ドキュメントが長すぎたり、不正確な情報が含まれていたり、長い間更新されていなかったり、どこかに行ってしまって見つけられなくなっていたりすることがある。丹念に API を構築しておきながら、適切なドキュメントを作成しなかったり、最新の状態に保てなかったり、オンラインで簡単に見つけられるようにしなかったりするのは、直感に反する。
  • あとは、登録ユーザーしか利用できないドキュメントがあるため、それが API の使用を決める前に API を理解したいというデベロッパーの妨げになる可能性がある。

REST API をプロのように文書化する

REST API ドキュメントの有用性が確立されたので、次はできるだけシンプルに優れたドキュメントを作成する方法に焦点を当てましょう。このセクションでは、最初の計画段階から、より幅広い読者に向けた執筆に至るまで、そのプロセスを 5つの主要なステップに分けて説明します。

1.REST API ドキュメントの計画

いい API ドキュメントを作成する際は、計画が非常に重要です。ドキュメントの構造、使用する言語やトーン、フォーマット/デザインの方法を決定できるように、ドキュメントが誰を対象としているのかを必ず把握してください。 これがすべて確立されると、明確なアウトラインが得られ、執筆プロセスがよりスムーズに進むようになります。

計画段階では、以下の2つの重要なポイントを考えてみて下さい:

  • APIドキュメントを読む人
  • 読む人の意図

このようなことを考えることで、ドキュメントが可能な限り有用で読みやすいものになれるように、ドキュメント化の全体的な目的を決定することができます。
明確に定められた構造によって、ドキュメンテーションは、ユーザーのニーズが満たされるように、すべてのベースをカバーすることができるのです。

2.最重要事項を決める

REST API ドキュメント内の項目はどれも価値がありますが、他のセクションよりも重要なのもあれば、絶対に外せないものもあります。なので、ドキュメントを書く前に、読者にとっての最重要事項を確立しておく必要があり、それには以下のようなものがあります:

  • REST API が何をするのか、何に使えるのかを説明する概要
  • API を利用するための認証情報の取得方法
  • API 使用時に遭遇する可能性のあるエラーメッセージの用語集
  • API を使用するのに必要なリソース
  • 利用規約

また、サイバーセキュリティに焦点を当てたセクションも推奨されます。多くのAPI が、個人データや財務データへの不正アクセスを試みるハッカーに狙われており、世界中で1日平均2,200件もの事件が発生しています。なのでデータをよりよく保護する方法について、デベロッパーに何らかの指針を提供するに越したことはないでしょう。

3.専門用語を避け、ドキュメント全体に一貫性を持たせる。

最初のページから最後のページまで、読者を混乱させないように、APIドキュメントはその構成や用語の使い方において一貫している必要があります。ドキュメントをできるだけ統一し、使用する言語が変わらないようにし、コード例が同じフォーマットに従っているようにしましょう。また、校正は、文書に矛盾がないか、意味をなしていないか、不必要な部分がないかを判断するのに非常に重要です。

そして、命名規則や用語は常に同じであるべきで、複雑な専門用語の使用は可能な限り避けるべきです。先に述べたように、デベロッパーはシンプルでわかりやすい言葉で書かれたドキュメントを読むのを好みます。そしてHTTP 動詞、ステータス コード、ドキュメント全体で参照されるその他の項目などの標準的な規則を使うときは、一貫性を保つことをお勧めします。

4.インタラクティブ性を含める

デベロッパーは、API ドキュメントを読みながら様々な要素をテストし、それが本来の動作をすることを確認するでしょう。Python や JavaScript のような一般的なプログラミング言語でインタラクティブなサンプルコードを追加することで、デベロッパーの仕事はより楽になり、それによって API を習得しやすくなり、その機能をサッと理解できるようになります。

また、リクエストの実行に使えるテストデータもドキュメントに含めることができ、それでデベロッパーはさまざまなレスポンスを確認することができます。デベロッパーを支援するために、ライブラリや SDK(ソフトウェア開発キット)を含めることもできますが、入門レベルの読者にとっては、シンプルな「入門」セクションや、わかりやすいチュートリアルが有益でしょう。ちなみにチュートリアルは、ビデオ配信もできます。

5.初級レベルの読者のために書く

REST APIドキュメントを読む人がみんなベテランデベロッパーであるとは限りません。だからこそ、初級レベルの読者にも対応することが重要であり、その読者には、ソフトウェア開発分野の初心者、マーケティングの専門家、ジャーナリスト、API が役に立つと思われる組織内のそれほど技術的でない意思決定者などがいるかもしれません。

多くの場合、よくできるテクニカルライターであれば、REST API の複雑な側面を難なくシンプルにして説明できることから、ドキュメントはデベロッパーではなくテクニカルライターによって作成されます。ただ、経験豊富なテクニカルライターでも、専門用語を使ったり、API の入門レベルの読者を無視したりするといった「罠」に陥ることがあります。

ドキュメントは、経験の浅いユーザーを念頭に置いて書くことをお勧めします。そして、より技術的な詳細に踏み込んだり、より複雑な例を含めたりする必要があると感じた場合は、「上級ユーザー セクション」でこれを取り上げて、API の可能性を最大限に示し、実装時の段階的な改善を紹介するといいでしょう。

REST API ドキュメントの書き方: ベストプラクティス

前のセクションで説明した5つの手順に従うことで、目的に適したものを超えたドキュメントを作成できるようになりますが、以下の実証済みのベストプラクティスに従うことで、API ドキュメントを将来にわたって使用でき、さらにわかりやすくすることができます。

業界標準の遵守

大抵の API ドキュメントは、読者がナビゲートしやすく、探しているものを見つけられるように、標準化された業界レイアウトに従って、大量の情報とデータを簡単に整理できます。それが業界標準から逸脱すると、混乱を招き、構造化されておらず、ユーザーによっては読めないドキュメントになってしまうかもしれません。

以下は、業界標準のレイアウトに共通する特徴です:

  • 3段組のレイアウトにこだわり、必要に応じて3段目をコード例に使う。
  • 読者が特定のコンテンツにジャンプしたり、ブックマークを追加したりしやすいように、動的なレイアウトを使う。動的なドキュメントになると、更新やメンテナンスがはるかにしやすくなる。
  • スティッキーコンテンツを有効にしてナビゲーションをさらに改善し、それによって読者がセクションからセクションへシームレスに移動できるようにする。
  • シンタックスには対照的な色を使い、コード例内の個々のコンポーネントを目立たせ、互いに簡単に区別できるようにする。

便利な API ツールを使う

可能な場合は API ツールを使って、コンテンツを自動的に生成し、ドキュメントをフォーマットすることをお勧めします。例えば Swagger は API 定義に基づいてドキュメントを生成し、まだ定義を作成していない場合は作成することができます。また、Swagger は高度なバージョン管理システムを備えており、REST API ドキュメント内の API 反復をすべてとても簡単に追跡できます。

もう1つの素晴らしいツールは、RESTful API などの 静的APIを記述するための RAML(RESTful API Modeling Language)です。RAML は、ドキュメントを作成する際にベストプラクティスの使用を奨励し、再利用を促進し、ドキュメントの発見およびパターンの共有を実現します。また、RAML は完全にオープンソースであり、多くのサードパーティツールが RAML と共に動作するように構築されています。

現代のデジタルの世界では、ドキュメントの作成など、数え切れないほどの作業をスピードアップできる AI についても触れないわけにはいきません。生成 AIは、研究目的や、編集や改良が可能な汎用コードの作成に非常に有用であり、それによってドキュメント作成のプロセスにかかる時間が短縮されます。

API ドキュメントを定期的に更新する

API ドキュメントでよくある問題に、そのドキュメントが古く、プロセスが整っていなかったり、最近の変更を含むドキュメントの維持を担当する人がいなかったりすることがあります。これはデベロッパーにとって腹立たしいことかもしれません。

そこで、REST API ドキュメントが古くならないようにするには、以下のことが行われるべきです:

  • 校正し、書式を整え、適切な最終確認が行われたものだけをアップデートに含めるようにし、焦って作った適当なアップデートにならないようにする。
  • 定期的にドキュメントを見直し、非推奨データを削除する。これは数カ月ごとに予定することもできるが、エラーや矛盾が確認された場合は、ユーザーからのフィードバックを受けてレビューを実施することもできる。 
  • ドキュメントを改善するために、IBM の API Connect のような API 分析ツールを活用する。このツールは、ドキュメントを編集して重要な部分にもっと焦点を当てることができるように、どのエンドポイントが最も使用されているかをハイライトすることができる。また、API アナリティクスは、一般的なユースケースを特定でき、それによって誰が API を使っているのかのより深いインサイトが得られる。

まとめ

REST APIドキュメントの作成は手間のかかる作業ですが、ベストプラクティスに従って、Swagger や RAML などのツールを活用することで、プロセスを効率化することができます。そしてプロセスが効率化されることで、ドキュメントがサッと作成されるだけでなく、そのドキュメントが可読性が高く、ユーザーのニーズを満たすことも保証されます。エントリーレベルのユーザーを重視することから、業界標準の遵守まで、REST APIドキュメントをプロのように書くことは想像以上に簡単です。

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