今回は、マルチクラウドデータアナリティクスとは何か、また何故多くの企業がそれを採用しているのかについてご紹介します。

クラウドコンピューティングは、今や確立されたベストプラクティスだといえますが、最近ではマルチクラウド戦略が当たり前になりつつあります。現在では、94%の企業がクラウドコンピューティングを使用しているのに対して、84%の企業がマルチクラウド戦略を採用しています。 

マルチクラウドは、データ分析を重要視している企業にとっては特に有益なデータ戦略です。この記事では、データ分析をマルチクラウドで実施する際に知っておくべき情報についてご紹介します。

マルチクラウドとは?

マルチクラウド」という用語は、1つの企業が複数のクラウドコンピューティングやストレージプロバイダーを使用するクラウド戦略を指します。たとえば、ストレージについてはあるクラウドベンダーを利用し、エンタープライズソフトウェアは別のクラウドベンダーを利用、さらにデータ分析の実行には別のクラウドベンダーを利用するといったようにマルチクラウド戦略を採用する場合があります。

マルチクラウドは、企業が複数のクラウドベンダーを利用している状況を表しています。これとは、対照的な用語として「ハイブリッドクラウド」があります。「ハイブリッドクラウド」は、企業がパブリッククラウドとプライベートクラウドを併用している状況を表しています。

マルチクラウド:4つのメリット

RightScale社の2019のクラウドに関する調査によると、企業は今や平均で4.9の異なるクラウドを使用しており、非常に多くの企業がマルチクラウドの時流に乗っていることからも、マルチクラウドには多くのメリットがあることは容易に想像できます。

以下では4つのクラウドのメリットについて紹介します。 

1. 地理

企業は、完全もしくは部分的に地理的な理由でマルチクラウド戦略をとる場合があります。レイテンシーとインターネット速度が重要な懸念事項である場合は、異なる場所にサーバーがある複数のクラウドプロバイダーと連携するのは有効です。

企業がデータ主権に関する法の対象となる場合、地理的な要因によってマルチクラウド戦略が必要となる場合があります。例えば、データを収集した地域と同じ地域または国にデータを保存することを要求する規制などです。

2.レジリエンシー

最高のクラウドプロバイダーには、顧客が期待する稼働時間のレベルを指定することができるサービスレベル契約(SLA)があります。ただし、99.99%の稼働時間の保証であったとしても、1年間で見ると1時間近くのダウンタイムに相当します。もし、その時間が許容できない場合、それに頼るのは難しいでしょう。

マルチクラウド戦略は優れたレジリエンシー(システム復旧能力)があり、単一のクラウドプロバイダーのダウンタイムやアウテージからユーザーを守ってくれます。念のため、クラウドデータやソフトウェアのバックアップに他のベンダーを利用し、1社のベンダーをプライマリクラウドとして利用することができます。

3. コストセービング

クラウドは一般的にオンプレミスよりも安いと考えられていますが、クラウドではさらにコストを削減するための方法が豊富にあります。

クラウドのすべてのニーズ(サーバー、データストレージ、ソフトウェア、ネットワークなど)に対して、単一のベンダーを利用するのは便利ですが、費用がかさんでしまう可能性があります。さらに、クラウドベンダーは、ベンダーロックインが発生した場合に、この状況を利用して価格を引き上げることができます(次のセクションを参照)。

マルチクラウドでは、各クラウドサービスごとに最適な価値あるソリューションを見つけることができます。また、特定のベンダーのコストが高すぎる場合に、より簡単なイグジット戦略を提供してくれます。

4. リスクマネジメント

クラウドコンピューティングの最大のリスクの1つは、ベンダーロックインです。これは、企業が離脱のコストが高いため、クラウドプロバイダーとの関係を維持せざる得ない状態です。たとえば、プロバイダーは、データを別のクラウドプラットフォームに移行するために不当な料金を請求し、保存するデータ量が増加し続けるにつれて、事実上「ロックイン」されてしまいます。

クラウド企業のもう一つの悪夢のシナリオ:クラウドプロバイダーが災害に遭ったり、倒産した場合はどうなるでしょう?たとえば、2013年には、クラウドプロバイダーのNirvanixが予期せず倒産し、データを別のサービスに移動、保存するにも2週間しか猶予がなかったため、顧客は急ぎの対応を迫られました。

単一のクラウドプロバイダーへの依存を減らすためにも、マルチクラウドは非常に効果的なリスクマネジメント戦略です。  

マルチクラウドデータアナリティクス

どのマルチクラウドがあなたにとって一番重要かに関係なく、データ分析にマルチクラウド戦略が最適であることに疑問の余地はありません。

一例として、マルチクラウド戦略の採用がこれまで以上に簡単になりました。その背景には、Google Cloud PlatformやMicrosoft Azureなどのパブリッククラウドプロバイダーが、顧客のマルチクラウド戦略を促進しようとしていることが挙げられます。

たとえば、2019年4月、GoogleはAnthosを導入しました。これは、オンプレミスでもパブリッククラウドでも、最も使い勝手の良い環境でアプリケーションを実行および管理するための新しいプラットフォームです。マイクロソフトは、Azure Arcを導入しました。AzureArcは、お客様がAzure外でサービスを実行できるハイブリッド/マルチクラウドテクノロジースイートです。 

従来、データ分析プラットフォームは、演算機能とストレージ機能が緊密に繋がっており、それらが組み合わせて提供されていました。マルチクラウドのデータ分析によりこの結びつきは緩和され、顧客は分析業務をより柔軟に、俊敏に、コントロールできるようになります。

データ分析には、データディスカバリー、データウェアハウス、データ統合、データマイニング、機械学習など、多くの異なる、時には相互に関連したりする考慮事項があります。マルチクラウドに移行すると、企業は自社のニーズに最適なサービスとプロバイダーを選択できるようになります。

たとえば、Amazon Redshift、Microsoft Azure Synapse Analytics、Google BigQueryなどの大手企業のほか、SnowflakeやClouderaなどの競合他社など、さまざまなデータウェアハウスソリューションがあります。マルチクラウドデータアナリティクスにより、目的に最適なデータウェアハウスソリューションを選択し、さらには、Amazon KinesisやAzure Event Hubsなどのようなリアルタイム処理ソリューションでそれを補完できます。

もちろん、こういった利点があるとはいえ、マルチクラウドのデータ分析戦略を計画して実装するのは容易ではないでしょう。慎重かつ戦略的な見通し、最適なソフトウェアツール、そして専門知識によって、マルチクラウドデータアナリティクスのプロジェクトが成功する可能性は非常に高くなることでしょう。

最後に

マルチクラウドデータアナリティクスは、データ分析の力でマルチクラウド戦略のレジリエンシーと柔軟性を組み合わせた未来の取り組みです。すでに複数のクラウドプロバイダーを利用している、オンプレミスを利用しているに関係なく、マルチクラウド戦略はデータ分析において次の進化と位置付けられ、より効率的で費用対効果の高いビジネスインサイトを得るのに役立ちます。

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