Salesforce Data Cloud は、企業が複数のソースから顧客データをリアルタイムに収集、統合、分析できる強力なツールであり、それでデータアナリストは、深いインサイト、より良い意思決定、個別化された顧客体験の提供など、多くの機会を得られます。

主なポイント

  • データアナリストが Salesforce Data Cloud を活用する方法
  • Salesforce Data Cloud を最大限に活かすための実用例

Salesforce Data Cloud とは

Salesforce Data Cloud(旧称:CDP(Salesforce Customer Data Platform))は、さまざまなソースからの顧客データを集約するために設計された統合プラットフォームです。この顧客 360プラットフォームは、複数のチャネルにわたる顧客データをセグメント化、分析、および有効化する機能を提供することから、各顧客に関する単一の総合的なビューが確保されます。

データアナリストにとって、これはインサイトの生成のために顧客の全データを照会、セグメント化、使用できる1か所に集めるようにするということになります。そして Salesforce Data Cloud は、CRM システム、マーケティングプラットフォーム、EC システム、SNS、さらには IoT デバイスからデータを引き出すことができます。では、Salesforce のデータクラウドとは何かがわかったところで、次は Salesforce のデータクラウドがどのように機能するのか、その特徴に迫ってみましょう。

データアナリスト向けの主な機能とメリット

  1. 統合された顧客プロファイル:Data Cloud Salesforce では、さまざまなタッチポイントからのデータを統合することで、顧客の360度ビューを作成でき、この単一の顧客プロファイルにより、複数のシステムにまたがるすべてのインタラクションが1か所に集約される。 
  2. 高度なセグメンテーション:このプラットフォームでは、行動、人口統計学的属性、エンゲージメント履歴などの属性に基づいて顧客データをセグメント化でき、これは、マーケティングキャンペーンや個別化されたエクスペリエンスのターゲットリストを作成する際に特に有用。
  3. リアルタイムのデータ処理:Salesforce Data Cloud はリアルタイムでデータを処理するため、顧客の行動や好みをすぐに把握できる。また、リアルタイムのダッシュボードを作成して、顧客生涯価値やチャーン率などの KPI(主要業績評価指標)を追跡できる。
  4. 予測分析と AI の統合:Salesforce Einstein のような AI が内蔵されたツールを統合することで、潜在的な高価値顧客の特定や顧客チャーンの可能性の判断など、予測モデルの構築ができる。

Salesforce Data Cloudの始め方

Salesforce Data Cloud を始めるのはお手軽で、料金体系を確認したら始められます。ここでは、Salesforce のデータクラウドにアクセスして顧客データの収集や分析をする方法をステップバイステップで見ていきましょう:

1.Salesforce Data Cloud アカウントのセットアップ

Salesforce Data Cloud による外部データ共有を開始する前に、お使いの Salesforce 環境が Data Cloud 機能にアクセスできることを確認してください。大体は以下の手順が必要です:

  • ライセンス:Salesforce アカウントに Data Cloud 機能が含まれていることを確認するか、Salesforce 担当者に連絡してこの機能を追加する。
  • 環境設定:Salesforce にログインし、メインのダッシュボードまたはアプリランチャーから Data Cloud にアクセスする。設定は、Salesforce CRM やその他のデータ ソースへの接続などの初期構成について順を追って説明される。

2. 様々なソースからのデータ取り込み

主なタスクの1つに、複数のタッチポイントから顧客データやメタデータを取り込むというのがあり、Salesforce Data Cloud には、CRM、マーケティング ツール、EC プラットフォームなどのデータを統合するコネクタが備わっている。

  • ネイティブコネクタ:Salesforce には、Salesforce CRM、Google Analytics、Mailchimp や Marketo などのマーケティングプラットフォームなど、多くの一般的なデータソース用のネイティブコネクタがある。
  • REST API:カスタム統合の場合、REST API を使って、ネイティブコネクタを持たないサードパーティシステムやデータベースからデータを取り込むことができる。

例:カスタムメイドの EC システムから顧客データをインポートしたいとすると、Salesforce Data Cloud の REST API コネクタを使って、関連する顧客データ フィールドをマッピングし、そのデータをリアルタイムで取り込むことができる。

3.データモデルの確定とマッピング

データの取り込みが完了したら、次のステップはデータモデルの確定であり、これは、顧客プロファイル、取引データ、その他の詳細が正しく整理されていることを確認するのに極めて重要です。

  • データモデルビルダ:Salesforce のデータモデルビルダを使って、さまざまなデータセット間のリレーションシップを作成する。たとえば、CRM データに含まれる顧客のメールと、EC システムの購入レ履歴をリンクして、統一された顧客ビューを構築できる。 
  • エンティティマッピング:Salesforce にはあらかじめデータモデルが用意されているが、ビジネスニーズに応じて構造をカスタマイズすることもできる。たとえば、各顧客を注文履歴、Web サイトでの行動、マーケティング活動などにマッピングできる。

4.セグメントとオーディエンスの作成

データが統合され整理されたので、顧客の行動や属性に基づいてオーディエンスセグメントの作成を始めることができます。Salesforce Data Cloud には、コーディング不要でセグメントを作成できる使いやすいインターフェースがあります。

  • セグメンテーション:最近の購入履歴、マーケティングメールとのエンゲージメント、地理的な位置などの属性に基づいてオーディエンスをフィルタリングするルールを定める。

例:過去30日間に2回購入し、Web サイトを5回以上訪問した顧客のセグメントを作成することができ、このセグメントは、ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンや、さらなる分析に使うことができる。

5.AI と予測分析の活用

Salesforce Data Cloud と Salesforce Einstein の統合により、AI を活用した強力なインサイトが実現します。

  • Einstein の予測:データを取り込んでセグメント化した後、Einstein を使って、顧客の行動を予測できる機械学習モデルを適用する。例えば、Einstein は、購入パターンやエンゲージメント履歴などの履歴データを分析することで、顧客の解約を予測することができる。
  • モデルの構築:コーディングの専門知識がなくても、プラットフォーム内で直接予測モデルを構築してトレーニングすることができ、そのモデルは、リアルタイムの予測のためにライブの顧客データに適用することができる。

6.マーケティングまたはセールスキャンペーンのためのデータの有効化

Data Cloud データが整理、セグメント化、分析されたら、最後のステップは有効化です。Salesforce Data Cloud は、データをさまざまなシステムにプッシュバックしてアクションを促進できるため、この点が真価を発揮します。

  • キャンペーン統合:セグメント化されたオーディエンスを Salesforce Marketing Cloud やその他のマーケティングプラットフォームにプッシュし、個別化されたメールキャンペーンを実施できる。また、そのデータを Salesforce CRM に同期して、営業チームが価値の高い見込み客に優先順位を付けることもできる。
  • リアルタイムダッシュボード:Salesforce Tableau などのツールを使ってリアルタイムのダッシュボードを構築および視覚化し、KPI、顧客行動、キャンペーンパフォーマンスを追跡する。

7.パイプラインの監視と改良

データパイプラインが稼働したら、パフォーマンスと精度を継続的に監視したいと思うでしょう。Salesforce Data Cloud には、データ品質をレビューし、時間をかけてモデルを改良するためのツールが備わっています。

  • データの品質:取り込んだデータの品質を定期的にチェックし、不整合や欠落値がないことを確認する。Salesforce のプラットフォームは、データ品質の問題を自動的に強調表示できる。
  • セグメントの絞り込み:分析結果に基づいて、セグメントまたはオーディエンスの確定を微調整し、進化する顧客行動に合わせて調整する。

プロのアドバイス

  • 小さく始める:より複雑なデータソースに拡張する前に、Salesforce CRM や EC プラットフォームなど、データソースを1、2個統合するところから始める。
  • できるだけ自動化する:Salesforce Data Cloud 内の自動化ツールを活用して、データの取り込みとセグメンテーションのプロセスを効率化する。
  • リソースを活用する:Salesforce には、広範なドキュメントとカスタマーサポートがあるので、そのようなリソースを活かして、問題のトラブルシューティングやセットアップの最適化を行う。

このようなステップに従うことで、Salesforce Data Cloud のパワーを活用して顧客データを強化して実用的なインサイトを得られるようになります。

実践:Salesforce Data Cloud でのデータ分析

例1:統一された顧客プロファイルの構築

Salesforce プラットフォーム CRM、Google Analytics、カスタムビルドの EC システムなど、さまざまなソースからの顧客データを結合するタスクを想像してみてください。Salesforce Data Cloud で、以下のことができるようになります:

  1. ネイティブコネクタまたは REST API を使って、これらのシステムから Salesforce Data Cloud にデータを取り込む。
  2. データモデルビルダを使って、データセット間の関係を定める。例えば、CRM の顧客メールアドレスと EC データのトランザクションをリンクする。
  3. そのデータセットを統合し、統一された顧客プロファイルを作成する。これにより、Web サイトの訪問から店舗での購入に至るまで、複数のタッチポイントにわたる顧客のインタラクションを見ることができるようになる。

統合プロファイルを備えた Data Cloud を使うと、顧客がオンラインでどの製品に反応したか、それが店舗での購入とどのように関連しているかなどのに対する答えが見えてきます。

例2:行動に基づいて顧客をセグメント化する

例えば、過去30日間に自身のオンラインストアとやり取りし、少なくとも2回購入した顧客をセグメント化したいとします。これは以下で実現できます:

  1. Salesforce Data Cloud のデータクエリを使って、顧客のアクティビティデータをクエリし、特定の条件を満たす顧客でフィルタリングする。
  2. セグメント化のルールを適用して、その顧客を動的セグメントに分類する。そしてそのセグメントは、新しいデータが流入すると自動的に更新される。
  3. このセグメントをエクスポートして、マーケティングキャンペーンや、プロモーションメールを送信する最適なタイミングの決定などのさらなる分析に使う。

例3:AI による顧客チャーンの予測

Salesforce Data Cloud と緊密に統合された Salesforce Einstein を使って、どの顧客のチャーンの可能性が最も高いかを予測できます。

  1. Salesforce Data Cloud に過去の顧客との対話データを取り込む。
  2. 購入頻度、カスタマーサポートとのやり取り、エンゲージメントレベルなどの主要なメトリクスを使って、Salesforce Einstein で予測 AI モデルをトレーニングする。
  3. 現在の顧客ベースにモデルを適用し、チャーンのリスクの高い顧客を特定する。

非構造化データからこのようなインサイトを得ることで、顧客との関係を改善し、リスクの高い顧客を維持するために個別化されたオファーや積極的なサポート戦略を作成することができます。

成功のための実践的なヒント

  1. リアルタイムデータの活用:プラットフォームのリアルタイム機能を常に活用する。KPI の追跡でも、顧客行動の分析でも、最新のデータにアクセスすることで、意思決定の精度が大幅に上がる。
  2. AI での自動化:Salesforce Einstein は、顧客チャーンや製品推奨などの予測モデルを自動的に構築できる。これが時間の節約になるだけでなく、データ分析にインテリジェントなレイヤーが追加され、より深いインサイトが得られる。
  3. 複数のデータソースの統合:関連する全データソース(CRM、SNS、マーケティングプラットフォーム)を統合し、総合的な顧客プロファイルを構築する。これにより、顧客の全体像を把握し、より深いインサイトが見えてくる。
  4. データコンプライアンス:Salesforce Data Cloud には強固なセキュリティとコンプライアンス機能が備わっており、GDPR などの規制に従って機密性の高い顧客情報を確実に取り扱うことができる。これは、PII(個人を特定できる情報)を扱う場合に特に重要。

まとめ

Salesforce Data Cloud は、顧客に関する深いインサイトを得ようとするデータアナリストにとって強力なツールであり、Snowflake、データレイク、データウェアハウス、Google クラウド、Databricks などのデータシステムからの顧客プロファイルの統合から、オーディエンスのセグメント化や予測分析の活用まで、データ分析を高度化する多数の機能が備わっています。また、プロバイダのリアルタイム機能、高度なセグメント化、AI の統合を活用することで、データアナリストはデータを実用的なインサイトに変えることができることから、最終的にワークフローとビジネス成果の向上が促されます。Salesforce データの自動化の開始をご希望でしたら、こちらから当社のソリューションエンジニアにぜひお問い合わせください。

Q&A

1.Salesforce Data Cloud はリアルタイムデータをどのように扱いますか。

Salesforce Data Cloud はリアルタイムでデータを処理し、さまざまなタッチポイントにおけるすべての顧客とのやり取りを、発生次第利用できるようにします。これにより、データアナリストはタイムリーで情報に基づいた意思決定を行うことができます。

2.Salesforce Data Cloud を他のデータソースと統合できますか。 

はい。Salesforce Data Cloud は、Salesforce CRM、Google Analytics、サードパーティのデータベースなど、さまざまなデータソースとの統合に対応しており、REST API を使ってカスタム統合を行うこともできます。

3.Salesforce Data Cloud でどのようにデータセキュリティが確保されますか。 

Salesforce Data Cloud は、暗号化やアクセスコントロールなどの強固なセキュリティ対策が施されています。また、GDPR などのデータプライバシー規制に準拠しており、顧客データの安全な取り扱いを保証します。

4.Salesforce Data Cloud を使うのにコーディングの知識は必要ですか。 

いいえ、Salesforce Data Cloud は、コーディングの詳しい知識がなくてもデータの取り込み、モデルの構築、およびセグメント化ができるように、ユーザーに優しいインターフェースで設計されています。ただし、REST API を介したカスタム統合など、高度なユースケースではコーディングが必要になる場合があります。