データ統合と ELT/ETL(抽出、変換、格納)の世界でよく比較される2つのツールに SSIS(SQL Server Integration Services)と ADF(Azure Data Factory)があります。どちらも Microsoft が提供するものですが、それぞれ異なるユースケースと利用者に対応しています。そこで本記事では、両データツールを検討しているデータエンジニアが十分な情報を得た上で決断できるように、両者を詳しく比較していきます。
主なポイント
- SSIS と ADF の主な技術的な違い。
SSIS とは
SSIS)(SQL Server Integration Services)は、オンプレミスのデータ統合用に設計された強力な ETL ツールです。SQL Server に内蔵されており、それでユーザーは多様なシステム間でのデータの抽出、変換、格納を行うことができます。SSIS は、10年以上にわたって Microsoft のデータプラットフォームの基礎となっており、企業環境で広く使われています。
SSIS の主な機能
-
豊富な変換機能:
- データのクレンジング、集計、修正のためのコンポーネント内蔵。
- データのクレンジング、集計、修正のためのコンポーネント内蔵。
-
SQL Serverとの統合:
- SQL Server データベースおよび関連ツールとのシームレスな統合。
- SQL Server データベースおよび関連ツールとのシームレスな統合。
-
コントロールフローとデータフロー:
- ワークフローの自動化とデータ移動を単一の環境に統合。
- ワークフローの自動化とデータ移動を単一の環境に統合。
-
カスタマイズ性:
- 高度なユースケース向けに、C# または VB.NET によるスクリプトに対応。
ADF とは
ADF(Azure Data Factory)は、Microsoft が提供する最新のクラウドベースのデータ統合サービスです。拡張性と柔軟性を重視して設計されており、ADF でオンプレミス環境とクラウド環境にまたがるデータワークフローのオーケストレーションと自動化が可能になります。また、ADF は Azure エコシステムの一部であり、クラウドベースのデータプラットフォームを活用するビジネスに最適です。
ADF の主な機能
-
クラウドネイティブのデザイン:
- クラウド向けに構築されているため、オンプレミスのハードウェアやメンテナンスが不要。
-
ハイブリッド統合:
- オンプレミスとクラウドベースの両方のデータソースに接続できる。
-
豊富なコネクタエコシステム:
- Azure のサービスや SaaS のプラットフォーム、データベースなど、90以上のネイティブコネクタに対応。
-
コードフリーおよびコードベースのオプション:
- ローコード開発向けのビジュアルインターフェースと、高度なワークフローの向けの JSON スクリプトを提供。
SSIS と ADF:機能ごとの比較
機能 |
SSIS |
ADF |
デプロイ |
オンプレミス |
クラウドベース |
スケーラビリティ(拡張性) |
サーバーのリソースによって制限される |
Azure サービスで動的に拡張 |
データソースの接続 |
主にSQL Server とフラットファイル |
クラウド、SaaS、オンプレミス向けの90以上のコネクタ |
P料金設定 |
SQL Server のライセンス モデル |
使用量に応じた従量課金制 |
習得のしやすさ |
プログラミング要件によって習得しにくい |
ユーザーに優しいインターフェースでより簡単 |
リアルタイム処理 |
限定的 |
リアルタイムおよびバッチ処理に対応 |
メンテナンス |
手動更新とサーバー管理が必要 |
Microsoft の自動更新による管理 |
ビッグデータ対応 |
限定的 |
Azure Data Lake および Databricks によるネイティブ サポート |
SSIS のユースケース
-
オンプレミスのデータ統合:
- SQL Server を実行し、データウェアハウスにデータを移動するためのオンプレミスのワークフローを管理する企業に最適。
-
エンタープライズの ETL:
- 高度な変換機能で複雑な ETL プロセスを処理する。
-
レガシー(旧式)システム:
- 最小限の更新やクラウド統合が必要なシステムに最適。
-
カスタムソリューション:
- ニッチな要件に対応した広範なスクリプトとカスタマイズが可能。
ADF のユースケース
-
クラウドデータ統合:
- クラウドに移行する組織や、すでにクラウドで運用されている組織に最適。
-
ハイブリッドのデータワークフロー:
- オンプレミスシステムとクラウドベースのプラットフォームを接続し、シームレスに統合する。
-
ビッグデータパイプライン:
- Azure Data Lake と Databricks の統合により、大規模なデータ処理がしやすくなる。
-
従量課金のスケーラビリティ:
- さまざまなデータワークロードを抱える企業だとコスト効率が得られる。
SSIS の利点
-
SQL Serverとの緊密な統合:
- Microsoft エコシステムのネイティブである SSIS は、SQL Server のデータベースとシームレスに連携する。
-
広範なカスタマイズ:
- 複雑なデータ変換ニーズに向けのカスタムスクリプトが可能。
-
成熟したツール:
- コミュニティによる強固なサポートとドキュメントが確立されている。
ADF の利点
-
クラウドの柔軟性:
- 完全に管理されたサービスにより、インフラ管理の必要性がなくなる。
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グローバルな拡張性:
- グローバルなデータ処理の需要に動的に対応して拡張。
-
幅広い接続性:
- Azure のサービスや SaaS プラットフォーム、および API 用の事前構築済みコネクタを搭載。
-
最新アーキテクチャに対応:
- ビッグデータテクノロジーやサーバーレスプラットフォームと統合しやすい。
SSIS の制約
-
オンプレミス重視:
- クラウドサービスとの統合に多大な労力が必要。
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スケーリングの課題:
- 基礎となるハードウェアとライセンスモデルによって制限される。
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複雑なメンテナンス:
- 更新、バックアップ、高可用性は手動での管理が必要。
ADF の制約
-
Azure への依存:
- Azure のエコシステム内での動作がベストであるため、マルチクラウド戦略の柔軟性が制限される可能性がある。
-
コスト管理:
- 従量課金制のため、注意深く監視しないと高額になる可能性がある。
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複雑なワークフローの学習曲線:
- JSON スクリプトのような高度な機能には、技術的な専門知識求められる場合がある。
SSIS と ADF:どちらを選択すべきか
次の場合は SSIS を選択しましょう:
- ワークフローが主にオンプレミスである。
- SQL Server 中心の環境がある。
- 高度なカスタム変換が必要。
次の場合は、Azure Data Factory を選択しましょう:
- 組織がクラウドに移行中、または既にクラウドを使っている。
- オンプレミスとクラウド システムを接続するハイブリッド データ ワークフローが必要。
- 拡張性と柔軟性に優れたデータ統合ソリューションが必要。
SSIS と ADF を両方使用:
オンプレミスとクラウド環境が混在する組織では、SSIS と ADF を連携させることができます。SSIS の パッケージは、Azure-SSIS Integration Runtimeを使って Azure にデプロイすることができるので、既存のワークフローを活用しながら、徐々にクラウドに移行することができます。
Integrate.io:最新の代替手段
SSIS や ADF の先を見据える企業にとって、Integrate.io だと両者の優れた機能を組み合わせたローコードプラットフォームを得られます。Integrate.io には100以上の事前構築済みコネクタ、リアルタイムおよびバッチデータ処理、ユーザーに優しい UI(ユーザーインターフェース)、オーケストレーション機能が備わっており、エンタープライズグレードのセキュリティとスケーラビリティを維持しながら、データワークフローをシンプルにします。なので実行中のデータ セットも簡単に変換できます。
主な機能:
- ノーコード/ローコード開発:非技術系ユーザーでも簡単にパイプライン作成が可能。
- ハイブリッド接続:オンプレミス、クラウド、SaaS プラットフォームをシームレスに接続。
- 高度なセキュリティ:SOC 2、GDPR、HIPAA に準拠したデータガバナンス機能。
まとめ
SSIS も ADF も強力なツールで、それぞれが特定のニーズに対応しています。SSIS は SQL Server を使ったオンプレミス環境において優れていますが、ADF はクラウド優先型の戦略にとって好ましい選択であり、組織のインフラやスケーラビリティ要件、将来の目標を評価することで、適切なツールを選択することができます。
柔軟でコード不要の代替手段をお探しの際は、Integrate.io のようなプラットフォームだとデータ統合への最新のアプローチを得られ、多様な環境でのシームレスなワークフローが実現します。また、データを Snowflake や Synapse アナリティクスなどに効率的に一元管理し、Power BI などのツールでデータを分析することができます。データの自動化を始める際には、こちらから当社のソリューションエンジニアにぜひご相談ください。
Q&A
Q1:SSIS はクラウドで実行できますか?
はい、Azure-SSIS 統合ランタイムを使うと、SSIS パッケージを Azure で実行できます。
Q2:SSIS よりも ADF の方がいいですか?
ADF と SSIS の選択は、ユースケースによって異なり、ADF はクラウドベースのワークフローに最適ですが、SSIS はオンプレミスの ETL に適しています。
Q3:SSIS と ADF の両方を使えますか?
はい、両方のツールの長所を活かして、ハイブリッド環境で相互に補完することができます。