最新のデータベースを選択する際に、最も大きな決断のひとつとなるのは、リレーショナル(SQL)か非リレーショナル(NoSQL)かのデータ構造の選択です。どちらのシステムにも独自の利点があり、異なるニーズに対応しているため、最適なデータ管理を行うためには、どちらを選択するかが非常に重要になります。
SQL(Structured Query Language)は、事前に定められたスキーマをモデル化するリレーショナル データベースで行やテーブルなどの構造化データを管理できるようにする、従来のアプローチを採用したプログラミング言語です。対する NoSQL(Not Only SQL)は、より柔軟で非リレーショナルなアプローチを提供し、非構造化データや動的データを扱うのに理想的です。ビジネスが進化し、データがますます多様化する中、SQL と NoSQL の決定的な違いを理解するのは重要です。
そこで本記事では、最も重要な違いを確認し、利用可能な最高の SQL データベースシステムと NoSQL データベースシステムについて見ていきます。
SQL と NoSQL の決定的な違いは以下の5つが挙げられます:
- SQL データベースはリレーショナルであり、NoSQL データベースは非リレーショナルである。
- SQL データベースは SQL(構造化問い合わせ言語)を使用し、あらかじめ定められたスキーマがあるが、NoSQLデータベースには非構造化データ用の動的スキーマがある。
- SQL データベースは垂直方向に拡張可能だが、NoSQL データベースは水平方向に拡張可能である。
- SQL データベースはテーブルベースだが、NoSQL データベースはドキュメント、キーバリュー、グラフ、ワイドカラムストア型である。
- SQL データベースは複数行のトランザクションに適しているが、NoSQL はドキュメントや JSON のような非構造化データに適している。
はじめに
SQL とは
SQL は、データの照会と管理に使われるドメイン固有の言語であり、これでユーザーはリレーショナルデータベースのレコードを照会、挿入、削除、更新できるようになります。また、トランザクションや、ストアドファンクションやビューなどの組み込みプロシージャを使用することで、複雑なロジックを適用することもできます。
NoSQL とは
NoSQL(Not only SQL )は、ドキュメント、グラフデータベース、キーバリューストアなどの非リレーショナルデータ構造を使ってデータの保存や検索をするデータベースの一種です。NoSQL システムは、従来のリレーショナルデータベースよりも柔軟に設計されており、使用量や負荷の変化に合わせて簡単にスケールアップやスケールダウンができるため、アプリケーションでの使用に最適です。
SQLよりNoSQLが使われる理由
NoSQL の方が多くの場合で柔軟性と拡張性が高いことから、SQL よりも好まれます。また、NoSQL システムを使う主な利点に、デベロッパーが従来のリレーショナルデータベースのオーバーヘッドなしに、さっと簡単にデータを保存してアクセスすることができる点が挙げられ、それによって、開発チームは基礎となるデータストレージの実装を気にすることなく、機能やコアビジネスロジックの迅速な提供に集中することができます。
SQL と NoSQL のどちらがいいか
SQL と NoSQL のどちらのタイプのデータベースを使うかは、プロジェクトの特定のニーズと要件によって変わってきます。例えば、Web アプリケーション用に速くてスケーラブル、かつ信頼性の高いデータベースが必要な場合は、NoSQL システムが望ましいかもしれません。一方、アプリケーションに複雑なデータクエリやトランザクションのサポートが必要な場合は、SQL システムを選ぶ方がいいでしょう。結局のところ、万能なソリューションというものは存在せず、データベースから何が必要であり、どのタイプのシステムが最も効率的な方法でそれを提供できるかということに尽きます。決断を下す前に、両方の選択肢を徹底的に調査するのがベストだということですね。
以下で、SQL と NoSQL データベースの最も重要な違いと、市場で入手可能なおすすめのシステムについて詳しく見ていきましょう。
SQL と NoSQL の比較
SQL と NoSQL について基本的に理解したところで、両者の違いを以下の比較表で見てみましょう:
SQL |
NoSQL |
「Structured Query Language」の頭文字を取ったもの |
「Not Only SQL」の頭文字を取ったもの |
RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム) |
非リレーショナルデータベース管理システム |
スキーマが確定されている構造化データに適している |
非構造化データ、半構造化データに適している |
データは、列と行があるテーブルに保存される |
データはコレクションやドキュメントに保存される |
トランザクション管理のためのACID特性(Atomicity(原子性)、Consistency(一貫性)、Isolation(独立性)、Durability(永続性))に従う |
必ずしもACIDプロパティに従うとは限らない |
JOIN や複雑なクエリに対応 |
JOINや複雑なクエリには非対応 |
正規化されたデータ構造を使用 |
非正規化データ構造を使用 |
大量のデータを扱うための垂直スケーリングが必要 |
水平方向のスケーリングが可能であり、大量のデータを扱うことができる |
例 MySQL、PostgreSQL、Oracle、SQL Server |
例 MongoDB、Cassandra、Couchbase、Amazon DynamoDB |
基本を理解したところで、データストレージのニーズに最適なテクノロジを決定するのに役立つ SQL データベースと NoSQL データベースの主な違いを5つ見てみましょう。
1.データベースアーキテクチャ
最も基本的なレベルでは、両者の最大の違いは、SQL データベースがリレーショナルであるのに対し、NoSQL データベースは非リレーショナルであるという点です。
リレーショナルデータベースとは
リレーショナルデータベースは、SQL(Structured Query Language:構造化クエリ言語)を使ってデータの保存と検索を行います。
- リレーショナルデータベース(リレーショナルデータベース管理システムまたは RDBMS とも呼ばれる)は、データを「行」と「テーブル」に格納する。これらのシステムは、さまざまなテーブルの情報を、データベースがテーブル内のデータ行に割り当てる一意の識別子である「キー」を使って接続し、「主キー」と「外部キー」により、このプロセスが促進される。
非リレーショナルデータベース(NoSQL)とは
非リレーショナル(NoSQL)データベースはより柔軟で、必ずしも SQL のような厳格な構造が必要というわけではありません。
- 非リレーショナル・データベースは、リレーショナルデータベースと同様にデータを保存するが、行やテーブル、キーは含まれない。このタイプのデータベースは、保存するデータの種類に応じたストレージモデルを利用する。
さらに読む:最新データベースの選び方:ユースケースに適した
2.データベーススキーマとクエリ言語
SQL データベースは構造化されたクエリ言語を使い、データの確定と操作のためにあらかじめ定めれたスキーマがあります。SQL は最も汎用性が高く、広く使われているクエリ言語の1つであり、多くのユースケースにおいて安全な選択肢となり、複雑なクエリには最適ですが、制限が多すぎることがあり、事前に定められたスキーマを使ってデータ構造を決定してからでないと使えません。また、データは全て同じ構造でなければならず、このプロセスにはかなりの事前準備が必要です。そしてデータ構造を変更しなければいけない事態が生じた場合、それは大変なことになり、システム全体を混乱させることになります。
対する NoSQL データベースには非構造化データ用の動的スキーマがあり、様々な方法でデータを保存します。その際、カラム指向、ドキュメント指向、グラフベース、あるいはキーバリューストアをデータに使うことができます。つまりこの柔軟性は、以下のようにできるということです:
- 最初に構造を定めることなく文書を作成することができる
- それぞれのドキュメントは独自の構造を持つことができる
- 構文はデータベースによって異なる場合がある
- 必要に応じてフィールドを追加できる
3.データベースのスケーリング
SQL データベースと NoSQL データベースのもうひとつの違いはスケーリング(拡張)です。SQL データベースは、ほとんどの状況で垂直方向にスケーラブル(拡張可能)です。つまり、CPU、RAM、SSD の容量を追加することで、1つのサーバーの負荷を増やすことができるということです。
対する NoSQL データベースは水平方向にスケーラブルであり、NoSQL データベースにさらにサーバーを追加する「シャーディング」と呼ばれるプロセスによって、より高いトラフィックに対応することができます。また、水平スケーリングは垂直スケーリングよりも全体的な容量が大きいため、NoSQL データベースは大規模で頻繁に変更されるデータセットに適しています。例えば、画像や動画のような大きなデータオブジェクトがある場合、NoSQL データベースを使うのがいいかもしれません。SQL データベースではこのようなオブジェクトを効率的に扱うことができず、データ要件が満たされにくいですからね。
4.データ構造
SQL データベースはテーブルベースであり、データレコードの各フィールドはテーブルの列と同じ名前を持ちます。 これは、複数のデータ変換を実行する場合に有益であることがわかります。
一方 NoSQLデータベースは、ドキュメント、キーバリュー、グラフ、またはワイドカラムストアであり、このような柔軟なデータモデルにより、NoSQL データベースの方が使いやすいというデベロッパーもいます。
5.ユースケース
SQLデータベースは複数行のトランザクションに適しており、NoSQL はドキュメントや JSON のような非構造化データに適しています。また、SQL データベースは、リレーショナル構造を中心に構築されたレガシーシステムにもよく使われています。
SQL データベースを、結合操作をいくつか伴うユーザー指向のアプリケーションに使用することがあるかもしれません。また、SQL スキーマで ACID プロパティの確立やデータの互換性の改善ができるようになるでしょう。そしてこのようなデータベースは、タスクを完了するのに必要なデータをサッと見つける場合にも便利です。
一方、NoSQL データベースは、結合操作を伴わない動的なデータを扱うアプリケーションに使うといいかもしれません。また、ビジネス効率に影響を与えないデータセットが欠落しているアプリケーションにも適しています。
ちなみに SQL データベースの例としては、MySQL、Oracle、PostgreSQL、Microsoft SQL Server などがあり、NoSQL データベースの例としては、MongoDB、BigTable、Redis、Cassandra、HBase、Neo4j、CouchDB などがあります。
SQL と NoSQL の使い分け
どのデータベースを選択するかは、構築するアプリケーションの種類と、そのアプリケーションに必要なデータ要件によって決まります。なので、それぞれのデータベースの特徴を理解することで、プロジェクトに最適なものを決めることができます。また、SQL と NoSQL のどちらを使うかを決める際には、スケーラビリティとパフォーマンスを考慮することも重要です。どちらのデータベースが自分のニーズに合っているかを知ることで、パフォーマンスの改善、データの整合性の確保、そしてゆくゆくはアプリケーションの成功につながるのです。
一般的に SQL データベースは、データが一貫しており、テーブル間の関係が明確に定められている構造化データに適しています。それに対し NoSQL データベースは半構造化データや非構造化データに適しており、データは事前に定められたスキーマに準拠しておらず、データ要素間の関係も十分に定められていません。また、SQL データベースは通常、複雑なクエリやトランザクション管理を必要とするアプリケーションで使用されるのに対し、NoSQL データベースはWeb アプリケーションやモバイルアプリなど、高いパフォーマンスとスケーラビリティが求められるアプリケーションで使われます。
SQL データベースと NoSQL データベースの主な違いがわかったので、次はワークロードに利用できるさまざまなオプションを検討してみましょう。
SQL データベース システム
最もよく使われている SQL データベースシステムを以下に挙げてみましょう:
MySQL
- 無料オープンソース
- 巨大なコミュニティ、広範なテスト、多くの安定性を誇る非常に確立されたデータベース
- すべての主要プラットフォームに対応
- レプリケーションとシャーディングが可能
- 幅広いユースケースに対応
Oracle
- 頻繁な更新、専門的な管理、優れたカスタマーサポートを備えた商用データベース
- 使用されるSQL ダイアレクトは手続き型言語/SQL または PL/SQL である
- 最も高価なデータベースソリューションの一つ
- 巨大データベースにも対応
- アップグレードが簡単
- トランザクション制御
- すべての OS(オペレーティングシステム)に対応
- 要求の厳しいワークロードを抱える企業や組織に最適
Microsoft SQL サーバー
- Microsoft が開発・管理する商用データベース
- 使用される SQL ダイアレクトは Transact SQL(T-SQL)である
- Windows と Linux でのみ動作
- ユーザーにとって使いやすい
- エラーの発見時にプロセス途中での調整が難しい
- 優れたドキュメント
- Oracle のようなコストをかけずに商用データベースソリューションを求める中小規模の組織に適している。
PostgreSQL
- オブジェクト指向データベース管理システム、つまり SQL と NoSQL のハイブリッドデータベースソリューション
- 無料オープンソース
- 幅広い OS との互換性
- 活発なコミュニティと多くのサードパーティサービスプロバイダー
- 高い ACID コンプライアンス
- 純粋な SQL を使用
- データがリレーショナルモデルに対応していない場合に最適。また、非常に大規模なデータベースや複雑なクエリを実行する場合にも有効。
さらに読む:データベースとデータウェアハウス:7つの違い
NoSQL データベースシステム
最も広く使われている NoSQL データベースシステムを以下にいくつか挙げてみましょう:
MongoDB
- 最も広く使われている NoSQL データベース
- 無料で使える
- 動的スキーマ
- 水平方向にスケーラブル
- シンプルなクエリでの優れたパフォーマンス
- 既存の行やアプリケーションのパフォーマンスに影響を与えることなく、新しいカラムやフィールドを追加可能
- 急速な成長段階にある企業や、非構造化データが多い企業に最適
- MongoDB の代替としてあまり知られていないものに、Apache Cassandra、Google Cloud BigTable、Apache HBase などがある。
Cassandra
- コモディティのサーバーで大量のデータを処理
- 障害点のない高可用性
- ピアツーピアアーキテクチャに従っている
- スケーラブル
- オープンソース
さらに読む:データベーススキーマ設計の完全ガイド
SQL/NoSQL データベース統合で Integrate.io ができること
SQL データベースか NoSQL データベースを決めたら、その中にデータを移動させる必要があります。データ統合は複雑なプロセスであり、深刻な問題を引き起こす可能性があり、これを誤ると、貴重なデータセットが失われたり、GDPR(EU一般データ保護規則)や CCPA (カリフォルニア州消費者プライバシー法)のようなデータガバナンスの枠組みを遵守していないとして罰金を科されたりする可能性があります。
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SQL と NoSQL データベースの比較に関するQ&A
Q. SQL データベースと NoSQL データベースの主な違いは何ですか。
A. SQL データベースはリレーショナル型であり、構造化されたクエリ言語を使用して、あらかじめ定められたスキーマがある構造化データをテーブルで管理します。対する NoSQL データベースは非リレーショナルデータベースであり、固定スキーマがない非構造化データや動的データを扱うための柔軟なアプローチを提供します。
Q. なぜ SQL データベースよりも NoSQL データベースを使う方が好ましい場合があるのでしょうか。
A. NoSQL データベースはその柔軟性と拡張性から好まれ、特に大規模な非構造化データセットや急速に変化するデータ構造を持つアプリケーションに適しています。また、NoSQL データベースは、事前に定められたスキーマを必要とせず、より早く簡単にデータを保存してアクセスすることができるため、開発サイクルの短縮になります。
Q. SQL データベースは NoSQL データベースと同じ種類のデータを扱えるのでしょうか。
A. SQL データベースは構造化データ用に設計されており、リレーショナルデータを使った複雑なクエリやトランザクションの管理に非常に効果的です。また、SQL データベースは構造化データを効率的に扱うことができますが、スキーマが固定されているため、非構造化データや半構造化データを扱う際には NoSQL データベースほど柔軟ではありません。
Q. SQL データベースと NoSQL データベースはどのようにスケールが違うのでしょうか。
A. SQL データベースは垂直方向に拡張するため、負荷の増加に対応するためにより強力なハードウェアが必要になります。一方、NoSQLデータベースは水平方向に拡張するため、複数のサーバーにデータを分散して大量のトラフィックやデータを管理することができ、Web スケールのアプリケーションに適しています。
Q. SQL と NoSQL データベースシステムの例を教えてください。
A. SQL データベースシステムの例としては、MySQL、PostgreSQL、Oracle、Microsoft SQL Server などがあり、強固なトランザクションサポートと複雑なクエリ機能で知られています。対する NoSQL データベースの例としては、MongoDB、Cassandra、Redis、Amazon DynamoDB などがあり、非構造化データに対するスケーラビリティと柔軟性が支持されています。